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筋トレ前の準備運動の仕方 Part.3 特異的ウォームアップ

前回、前々回とトレーニング前の準備運動として、

①身体を温めよう(アクティブウォームアップ)。
②関節可動域を広げよう(ダイナミックストレッチ)。

と記載しました。

今回の記事は、アクティブウォームアップ・ダイナミックストレッチの次に行ってもらいたい準備運動について書き綴っていきます。

準備運動第3段階:次はそのエクササイズを軽い負荷で行おう

トレーニング前の準備運動として、アクティブウォームアップ・ダイナミックストレッチの次は、そのエクササイズを軽い負荷で行うことをオススメしています。

論文を見てみる

詳しくは(こちらの英語文献)を見ていただきたいのですが、

・9人の男性が対象。
・レッグプレス・レッグエクステンションなどを実施。
・12RMの重量を扱い往復回数を調べる。
・3つのパターンを用意。
・1つ目は、実施前にスタティックストレッチを行うパターン(以下PSS)。
・2つ目は、実施前にダイナミックストレッチを行うパターン(以下BS)。
・3つ目は、実施前にそれらのエクササイズ(レッグプレス・レッグエクステンションなど)を軽い負荷で行うパターン(以下SW)。
・SWは12RMの30%で20レップ。

という実験が行われました。その結果がこちらです。

出典:Sá MA, et al. Acute effects of different stretching techniques on the number of repetitions in a single lower body resistance training session. J Hum Kinet. 2015 Apr 7;45:177-85.

上のグラフは、各パターンにおける往復回数の合計値を表したものですが、SWで大きな値を記録しました。

「往復回数の合計値が大きい」ということは「より大きな刺激を筋肉に与えることができる」や「より重たい重量を持ち上げることができる」と考察できます。そのため、次はそのエクササイズを軽い負荷で行うことをオススメしているわけです。

なお、SWで大きな値を記録した理由としては、そのエクササイズを軽い負荷で行ったことにより、そのエクササイズで必要となる神経系が活性化されたため、と考えられています(詳しくはこちらの日本語文献を参照)。

特異的ウォームアップ

このように、そのエクササイズ(もしくは、そのエクササイズに類似したエクササイズ)を軽い負荷で行うことは「特異的ウォームアップ」と呼ばれています。

では一体「重量」「回数」「セット数」「セット間休憩時間」などはどうすれば良いのでしょうか?

重量・回数・セット数・セット間休憩時間

まずは重量・回数・セット数・セット間休憩時間についてですが、これらに関しては正直なところ何がベストかはわかりません。

というのは「30%1RMの重量で行った場合と、50%1RMの重量で行った場合ではトレーニングにどう影響するか?」といった研究が行われていないためです(少なくとも私の知る限り)。

しかし、今回の「筋トレ前の準備運動の仕方シリーズ」で入手したデータや、安全面・精神面などを考慮すると、

・フォームの確認を踏まえ、まずは非常に軽い負荷で行う。
・精神面の準備も配慮し、非常に軽い負荷だけで終わるのではなく、段階的(徐々)に負荷を上げる。
・疲労を考慮し、そこまで追い込まない。

このようなものが良いだろう、と推測をすることはできます。

そして、私や知人のトレーナー・トレーニーのやり方をまとめると、

重量:30%1RM以下から始め、10〜30%の間隔で増やす。
回数:その重量における最大往復回数の半分以下(※)。
セット数:3〜6セット。
セット間休憩時間:1〜3分。

となります。

※下の表は、最大挙上重量の%(%1RM)と最大往復回数の関係を表したRM表と呼ばれるものです。

 

仮に、スクワットで100kg挙上できる方がいた場合、80kg(80%)でスクワットを行った場合は「最大で8回こなすことができる」ということになります。

特異的ウォームアップの回数として「その重量における最大往復回数の半分以下」と記載しましたが、仮に60%1RMの重量を扱い特異的ウォームアップを行うのであれば、18回の半分以下、つまり「9回以下」に設定するということです。

ちなみにですが、スクワットで100kg挙上できる方における、具体的な重量・回数・セット数・セット間休憩時間の例としては、

例①
1セット目:20kg(シャフトだけ)で10回。
2セット目:1〜3分ほど休息を挟んだのち、50kgで5回。
3セット目:1〜3分ほど休息を挟んだのち、70kgで3回。
4セット目:1〜3分ほど休息を挟んだのち、90kgで1回。
5セット目:1〜3分ほど休息を挟んだのち、80kgで8回(本番)

例②
1セット目:20kg(シャフトだけ)で10回。
2セット目:1〜3分ほど休息を挟んだのち、50kgで5回。
3セット目:1〜3分ほど休息を挟んだのち、60kgで4回。
4セット目:1〜3分ほど休息を挟んだのち、70kgで3回。
5セット目:1〜3分ほど休息を挟んだのち、80kgで2回。
6セット目:1〜3分ほど休息を挟んだのち、90kgで1回。
7セット目:1〜3分ほど休息を挟んだのち、80kgで8回(本番)

のようなものが挙げられます。私は、セット数:〜4セット、セット間休憩時間:1〜3分(≒呼吸を整え、フォームの確認をする程度)で指導しています。

なお、タイミングについてですが「まとめて」ではなく「各々の直前」に行うことをオススメしています。

〜トレーニングメニュー〜
1種目め:スクワット
2種目め:ベンチプレス
3種目め:デッドリフト

このような時は、

①アクティブウォームアップ
②ダイナミックストレッチ
③スクワット(特異的ウォームアップ)
④ベンチプレス(特異的ウォームアップ)
⑤デッドリフト(特異的ウォームアップ)
⑥スクワット(本番)
⑦ベンチプレス(本番)
⑧デッドリフト(本番)

ではなく、

①アクティブウォームアップ
②ダイナミックストレッチ
③スクワット(特異的ウォームアップ)
④スクワット(本番)
⑤ベンチプレス(特異的ウォームアップ)
⑥ベンチプレス(本番)
⑦デッドリフト(特異的ウォームアップ)
⑧デッドリフト(本番)

ということです。

こうする理由はいくつかあるのですが、その1つとしては「配置の手間」が挙げられます。

例えば、パワーラックとベンチプレスラックにてこれらのエクササイズを行う場合「まとめて」のパターンでは「まずは、パワーラックでスクワット(特異的ウォームアップ)を行い、今度はベンチプレスラックに移動してベンチプレス(特異的ウォームアップ)を行い、今度はまたパワーラックに移動してデッドリフト(特異的ウォームアップ)を行い、そしてここからスクワット(本番)を行い、今度はもう1度ベンチプレスラックに移動してベンチプレス(本番)を行い…」といったように「面倒」と感じる場合もあるでしょう。

最後に

トレーニング前の準備運動として、アクティブウォームアップ・ダイナミックストレッチの次は、特異的ウォームアップを取り入れることをオススメしていますが、そのエクササイズをそのまま特異的ウォームアップとして行うことは、場合によって難しいこともあります。

例えば、特にこれといった運動経験のない非力な女性のベンチプレスにおいては、20kg(シャフトだけ)でもかなり大きな負荷となり「特異的ウォームアップとしては重すぎる(セットを組めない)」なんてことも珍しくありません。

そんな時は「左右3〜5kgのダンベルを持ったダンベルプレス」や「トレーニングマシンのチェストプレス」というように「そのエクササイズに類似したエクササイズ」を取り入れるようにしましょう。

つまり、そのエクササイズと同じ関節運動があるエクササイズを取り入れ、臨機応変に対応しようということです。

次回は、これまで書き綴った準備運動についてまとめていきたいと思います。

関連記事

(筋トレ前の準備運動の仕方 Part.1 アクティブウォームアップ)

(筋トレ前の準備運動の仕方 Part.2 ダイナミックストレッチ)

(筋トレ前の準備運動の仕方 Part.3 特異的ウォームアップ)

(筋トレ前の準備運動の仕方 まとめ)

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