【アスリート必読】競技力向上とトレーニング(筋トレ) 実践編④ 重量と回数

 

前回(【アスリート必読】競技力向上とトレーニング(筋トレ) 実践編③ RFDと爆発的エクササイズについて)のまとめ

・「全体的なRFDをより向上させることができる」との理由から、クリーンやスナッチなど爆発的エクササイズを取り入れることはある。
・しかし、クリーンやスナッチのフォーム習得の難度は高くなっているため、取り入れる場合はトレーニングスキルや状況を吟味してからになる。

これまで「実際に指導しているエクササイズ」と「まず指導することのないエクササイズ」について書き綴ってきました。

〜実際に指導しているエクササイズ〜
基本5種をはじめとした一般的エクササイズ。クリーンやスナッチなど爆発的エクササイズ。
〜まず指導することのないエクササイズ〜
ゴルフにおける「ケーブルスイング」バレーにおける「ダンベルスイング」など動作類似エクササイズ。「お腹を凹ませるドローイン」「バランスボール上でのスクワット」など巷で流行りのオシャレな体幹トレーニング。

今回の記事は、実際に指導しているエクササイズの「重量」と「回数」について触れていきますが、最初に結論から申しますと、

・一般的エクササイズ:90%1RM前後の重量で3〜5回。しかし、75%1RM前後の重量で8〜12回行う時もある。
・爆発的エクササイズ:85%1RM前後の重量で3〜5回

という指標を設けています。

一般的エクササイズ

筋力

詳しくは(こちらの英語文献)を見ていただきたいのですが、ここでは90%1RMの重量で3〜5回のトレーニングを行うグループと、70%1RMの重量で10〜12回のトレーニングを行うグループにおける筋力の変化率を調べています。

つまり、高重量低回数グループと中重量中回数グループに分けてトレーニングを実施したわけです。

その結果、筋力は高重量低回数グループでより大きな増加が起こることが確認されました。

ベンチプレスの1RM
高重量低回数グループ:14.8%増加
中重量中回数グループ:6.9%増加

また、詳しくは(こちらの英語文献)も見ていただきたいのですが、ここでも先程と同様に、高重量低回数グループと中重量中回数グループに分けてトレーニングを実施し、筋力の変化率を調べています。

その結果は以下の通りです。

スクワットの1RM
高重量低回数グループ:30.0%増加
中重量中回数グループ:16.8%増加

さらに、詳しくは(こちらの英語文献)も見ていただきたいのですが、ここでは高重量低回数グループと中重量中回数グループではなく、中重量中回数グループと低重量高回数グループ(30〜50%1RMの重量で25〜35回)における筋力の変化率を調べています。

その結果、

スクワットの1RM
中重量中回数グループ:19.6%増加
低重量高回数グループ:8.8%増加
ベンチプレスの1RM
中重量中回数グループ:6.5%増加
低重量高回数グループ:2.0%増加

このようなデータが得られました。

そのため、筋力の増加においては、高重量低回数でのトレーニングがもっとも効果的、と言えるでしょう。

RFD(≒筋の収縮速度)

詳しくは(こちらの英語文献)を見ていただきたいのですが、ここでは高重量低回数グループと中重量中回数グループに分けてトレーニングを実施し、RFD(≒筋の収縮速度)の変化率を調べています。

その結果、RFDの向上率は高重量低回数グループ>中重量中回数グループ、というデータが得られました。

また、詳しくは(こちらの英語文献)も見ていただきたいのですが、ここでも先程と同様に、高重量低回数グループと中重量中回数グループに分けてトレーニングを実施し、RFDの変化率を調べています。

その結果、RFDの向上率は高重量低回数グループ>中重量中回数グループ、というデータが得られました。

さらに、詳しくは(こちらの英語文献)も見ていただきたいのですが、ここでは高重量低回数グループと中重量中回数グループではなく、中重量中回数グループと低重量高回数グループにおけるRFDの変化率を調べています。

その結果、RFDは中重量中回数グループで向上が確認されたが、低重量高回数グループでは有意な変化は見られなかった、というデータが得られました。

そのため、RFDの向上においても、高重量低回数でのトレーニングがもっとも効果的、と言えるでしょう。

結論

以上を踏まえた上で今1度原点に戻りますが、そもそもアスリートがトレーニングを行う理由は「身体能力を効果的に高めることができる」からです。

そして、この身体能力を代表するものに「筋力」や「筋の収縮速度(≒RFD)」2つを掛け合わせた「パワー」があり、これらは「ジャンプ」「スプリント」「方向転換」などの動作における能力の高さと密接に関係しています。

よって、一般的エクササイズでは、筋力・筋の収縮速度を効果的に高めることのできる高重量低回数を、具体的には「90%1RM前後の重量で3〜5回」を指標に設定しているわけです。

持久力

もっとも、このような話をすると「マラソンなどの持久力が重要になる競技(持久系競技)には、低重量高回数でのトレーニングが効果的だと思うのですが、どうでしょう?」とのご質問を受けることがあります。

確かに、低重量高回数でのトレーニングは持久力をより改善させる、というデータは存在します。

詳しくは(こちらの英語文献)を見ていただきたいのですが、ここでは中重量中回数グループと低重量高回数グループに分けてトレーニングを実施し、持久力の変化率を調べています。

その結果、持久力は中重量中回数グループで有意な変化は見られなかったが、低重量高回数グループでは改善が確認された、というデータが得られました。

しかし、ここでの持久力とは「50%1RMの重量に設定して潰れるまで行った場合の話なのです。

どういうことなのかと言いますと、ここにAとBという男性がいたとしましょう。

AとBは全く同じ人間で体重が50kgあり、スクワットの1RMは100kg、そして、50%1RMの重量(=50kg)では30回こなすことができます。

Aは中重量中回数で、Bは低重量高回数でトレーニングを行い、筋力と持久力がどのように変化するかを調べました。

その結果、

A
スクワットの1RM:100kg→150kg
持久力:50%1RMの重量(=50kg)で30回→50%1RMの重量(=75kg)で30回
B
スクワットの1RM:100kg→120kg
持久力:50%1RMの重量(=50kg)で30回→50%1RMの重量(=60kg)で40回

というデータが得られました、という話なのです(※説明をわかりやすくするため、数値はキリよく非厳密に記載しています)。

では、これを踏まえた上で、持久系競技であるマラソンについて考えていきます。

AとBともに体重の変動がなかった(50kgのまま)と仮定すると、シンプルな計算ですが、Aは33.3%の負荷で走ることになります(スクワットの1RMが150kgなのに対し、体重は50kgなので)。

一方、Bは41.6%の負荷で走らなければなりません(スクワットの1RMが120kgなのに対し、体重は50kgなので)。

そのため、確かに、低重量高回数でのトレーニングは持久力をより改善させる、というデータは存在しますが、これはあくまでも「50%1RMの重量に設定して潰れるまで行った」場合の話であるため「マラソンなどの持久力が重要になる競技(持久系競技)には、低重量高回数でのトレーニングが効果的」と単純に結論づけることはできないのです。

むしろ、論理的に考えるのであれば「筋力をより増加させるようなトレーニング」の方が、マラソンなどの持久系競技には効果的かもしれない、と推測できます。

そして、事実「筋力をより増加させるようなトレーニングの方が、マラソンなどの持久系競技には効果的、というデータが存在します(こちらの英語文献を参照)。

このような理由もあって、一般的エクササイズでは高重量低回数を、具体的には「90%1RM前後の重量で3〜5回」を指標に設定しているわけです。

中重量中回数

しかしながら、場合によっては少し重量を軽くし回数を多くした中重量中回数、具体的には「75%1RM前後の重量で8〜12回」で指導を行う時もあります。

では、なぜこのような重量・回数で指導を行う時もあるのかというと、

・筋力をさらに増加させることができるという印象がある。
・相手選手の疲労を早い段階で誘発させることができる。

からです。

まずは「筋力をさらに増加させることができるという印象がある」に関してですが、上に記載してきた通り、筋力の増加においては、高重量低回数でのトレーニングがもっとも効果的、と言えるデータが多数存在します。

筋力は、神経系(運動単位の種類と総数・運動神経の発火頻度…etc)に影響を受けることがわかっており(詳しくはこちらの日本語文献を参照)、高重量低回数でのトレーニングは神経系を発達させるのに効果的、というのがその理由です。

しかし、筋力に影響する要因は神経系だけではありません。詳しくは(こちらの日本語文献)を見ていただきたいのですが、筋断面積(≒筋肉量)も筋力に強く影響することが確認されています。

そして、筋断面積の増加においては、中重量中回数でのトレーニングがもっとも効果的かつ効率的(時間効率)、と言えるデータが存在するのです(詳しくはこちらの英語文献こちらの英語文献を参照)。

よって、確かに筋力の増加においては、高重量低回数でのトレーニングがもっとも効果的、と言えるデータが多数存在しますが、高重量低回数+中重量中回数でのトレーニング、すなわち「混合トレーニング」が最終的に一番良いのではないだろうか、いう印象を持っています。

次は「相手選手の疲労を早い段階で誘発させることができる」に関してですが、ここにCとDという男性がいたとしましょう。

CとDは同じ身長ですが筋断面積に違いがあり、Cの方がDよりも2倍広い筋断面積を持っています。

では、この2人を皆さまが担ぎ上げるとした時、どちらの方が大変でしょうか?どちらの方が多くのエネルギーを消費するでしょうか?

これは、間違いなくCになります。なぜなら、筋断面積が広いゆえ、体積が大きく体重もあるためです(担ぎづらく何より重い)。

よって、コンタクトのある競技(ラグビー・サッカー・バスケットなど)においては、筋断面積を増加させる=体積・体重を増やすことで、相手選手の疲労を早い段階で誘発させることができ、結果として試合を有利に運べる、と考察することが可能です。

そして、筋断面積の増加においては、先述した通り、中重量中回数でのトレーニングがもっとも効果的かつ効率的(時間効率)、と言えるデータが存在します。

このような理由から「しかし、75%1RM前後の重量で8〜12回行う時もある」と先述したわけです。

 

爆発的エクササイズ

RFD(≒筋の収縮速度)は、前回・今回の記事で説明したよう、クリーンやスナッチなどの爆発的エクササイズ(最高速度、もしくは最高に近い速度での力発揮、あるいは大きな加速を伴うエクササイズ)及び、高重量低回数での一般的エクササイズで有意な向上が確認されていますが、なぜこれら2つのエクササイズでRFDの有意な向上が確認されたのかというと、それは神経系によるものだと考えられています。

詳しくは(こちらの英語文献)を見ていただきたいのですが、RFDを決定する因子に神経系があります。そして、神経系を効果的に発達させるエクササイズに、上記の2つがあるわけです。

事実、爆発的に行う&重量を増やすことで筋活動は大きくなる、というデータが存在します(詳しくはこちらの英語文献こちらの英語文献を参照)(神経系と筋活動の関係については、こちらのサイトがわかりやすいと思います)。

そのため、クリーンやスナッチにおいては「ヒョイヒョイスイスイ」といったような低重量高回数で指導することはありません。高重量低回数を指標にしています。具体的な指標はどれくらいかと言いますと、一般的エクササイズよりも少し軽い「85%1RM前後の重量で3〜5回」です。

では、なぜこのような指標を設けているのかというと「安全性」がその理由です。

クリーンやスナッチは、やはり一般的エクササイズよりもフォーム習得の難度は高くなっています。言い換えるならば、適切なフォームを行うにあたって高い集中力が要求される、ということです。

そのため、回数・セットの後半では特に精神的な疲労の影響からか、転倒はしないにしても「ややふらつく」シーンが時たま見られます。

よって、爆発的エクササイズでは、高重量低回数でありながら一般的エクササイズよりも少し軽い「85%1RM前後の重量で3〜5回」を指標に設定しているわけです。

ちなみに、NSCA刊行の(Training Principles for Power)には、クリーンやスナッチの具体的な重量・回数が記載されているのですが、それによると「75〜85%1RMの重量で5回」です。

次回に続く。

 

まとめ

・基本5種をはじめとした一般的エクササイズにおける重量と回数は「90%1RM前後の重量で3〜5回」もしくは「75%1RM前後の重量で8〜12回」。
・クリーンやスナッチなど爆発的エクササイズにおける重量と回数は「85%1RM前後の重量で3〜5回」。
ご迷惑をおかけしております

最近、ブログの更新頻度がかなり落ちております。申し訳ありません。実は、新規パーソナルトレーニングジムの立ち上げに関与しており、そちらの方が忙しい、という現状です。しかし、もうじきで落ち着くとは思います。あ、あと、ブログのタイトルを「男の筋トレ教則本」から「筋トレ教則本」に変更しました。これからもよろしくお願いいたします。