デッドリフトの効果
デッドリフトは、太もも前面にある内側広筋や外側広筋などの大腿四頭筋、太もも後面にある大腿二頭筋や半腱様筋などのハムストリングス、お尻の筋肉である大臀筋など、下半身の筋群を強化することができます。
また、上体を前傾させることにプラスしバーベルを手で保持するため、脊柱起立筋や僧帽筋上部・前腕にも刺激を入れることが可能です。
詳しくは(こちらの英語文献)を見ていただきたいのですが、下のグラフはデッドリフトを行った際の筋活動を表したものとなっています。
競技力向上においては、ジャンプ力(跳躍力)の向上が確認されており、脚を使う競技においては、非常に有益な効果をもたらします。
詳しくは(こちらの英語文献)を見ていただきたいのですが、
・平均年齢23歳の54名が対象。
・2つのグループに分ける。
・1つはデッドリフトトレーニングを行うグループ(以下DL)。
・1つは行わないグループ(以下CON)。
・DLは週2回10週間継続。
・トレーニング前後の垂直跳びの変化を計測。
という実験を行った結果、
CON:有意な変化なし
というデータが得られております。
〜デッドリフトの効果まとめ〜
・ボディメイクにおいては、たくましい脚や背中を作ることができる。
・競技力向上においては、ジャンプ力を向上させることができる。
デッドリフトのバリエーション
デッドリフトにはいくつかのバリエーションがあるのですが、よく見られるデッドリフトは「コンベンショナルデッドリフト」と呼ばれるものです。
しかし、私はこのコンベンショナルデッドリフトを行わせることは、あまり多くありません。
コンベンショナルデッドリフトは膝関節を屈曲させていくため、スクワット同様、大腿四頭筋がメインで効いてしまうという特徴があるからです。
そのため、私は膝関節をあまり屈曲させない「ルーマニアンデッドリフト」をオススメしています。膝関節の屈曲を制限することで、ハムストリングスや大臀筋・脊柱起立筋といった、ポステリオールチェーン(後面の筋群)に大きな刺激を与えることが可能です。
ルーマニアンデッドリフトのやり方・呼吸
※床にバーベルを置いたところからスタートするのではなく、バーベルを持ち上げたところからスタートします。
スタートポジション
・足幅は肩幅よりもやや狭め、腰幅程度に広げる。それ以上狭めると支持基底面の関係から安定性が低下し、あまりにも広げすぎると物理的な問題から可動域が制限されるため注意すること。
・つま先は正面、もしくはほんの少しだけ外に向ける。
・バーベルを握る手幅は肩幅に設定する。つまり、太もものすぐ外側を握ることになる。
・できるだけ左右対称の負荷をかけたいとの理由から、オルタネイト(一方が順手もう一方が逆手)グリップではなく、両手ともプロネイティッド(手の甲を正面に向ける)グリップを使用する。
・前腕に疲労が生じ、握力が限界に近づいてきたらリストストラップを使用する。
・目線は正面、もしくはやや下に向ける。
・脊柱は自然なS字、つまり生理的湾曲をキープする。
・胸を張り、鉛筆を挟むように肩甲骨を寄せる。
・骨盤はニュートラル、もしくはやや前傾をキープする。
スタート〜フィニッシュ
・息を大きく吸い止める。
・息を止めたと同時に腹直筋・腹斜筋群などお腹周りに力を入れ、上体を一枚の板のように固定する。
・お尻を大きく後ろに突き出し、上体を折りたたむ。
・かかと寄りの荷重を意識すると「お尻を大きく後ろに突き出し、上体を折りたたむ」が行いやすい。
・上体を折りたたむと同時に、ほんの少しだけ膝関節を曲げることになるが「曲げる」ではなく「緩める」という感覚を持つこと。
・生理的湾曲が維持できる一番深いところまで上体を折りたたむ。言い換えるならば、腰が丸まるギリギリのところでストップ。
・上体を折りたたむほど、ハムストリングスにストレッチを感じるようになる。もし、ハムストリングスにストレッチを感じないのであれば、膝関節を曲げすぎている可能性がある。
・バーベルは常に太ももに沿うようにすること。こうすることで、肩関節の伸展作用を担う広背筋や大円筋にも刺激を与えることが可能となる。
・ハムストリングス・大臀筋を「ググッ」と収縮させる意識をし上体を戻す。
・動作中は、鉛筆を挟むように肩甲骨を寄せる意識を常に持つ。
・上体を戻し切ってから、もしくは上体を戻し切る少し手前から息を吐く。
なお、呼吸について詳しく知りたい方は(筋トレでの呼吸の仕方 呼吸はするべきか止めるべきか? バルサルバ法について)をご覧ください。
スティッフレッグドデッドリフトに関して
ルーマニアンデッドリフトと同じく、ポステリオールチェーンを集中的に鍛えるバリエーションとして「スティッフレッグドデッドリフト」があります。
stiff=硬くて曲がらない、legged=脚という意味通り、膝を曲げず伸ばしきった状態で行うデッドリフトです。
しかし、私はこちらをあまり推奨していません。もし膝が逆に反るような反張膝だった場合、スティッフレッグドデッドリフトを行うことで可動域の限界を超え、膝に悪影響を及ぼす可能性が考えられるためです。
最後に
ルーマニアンデッドリフトでは上体を強く前傾させるため、腰が丸まってしまう方が多く見受けられます。腰が丸まると傷害発生のリスクが高まるため、細心の注意を払い行うことを強くオススメします。