トレーニングには、
2.筋力・筋肉量を増加させる(筋肥大を起こす)。
3.関節可動域を拡大させる。
など、様々な効果が存在します。
そのため「競技におけるレベルのアップ」や「ボディメイク」を目指されている方には、もってこいの手段となり得るでしょう。
しかし、トレーニングの効果はこれだけではありません。腱を強化させ、骨密度を増加させ、高血圧をも改善させます。
トレーニングは腱を強化させる
そもそも腱とは?
筋肉は、とある身体組織を介して骨と付着しているのですが、それが「腱」です。「筋肉と骨を結びつける架け橋」と捉えたらわかりやすいかもしれません。
トレーニングが腱に及ぼす影響
詳しくは(こちらの英語文献)を見ていただきたいのですが、
・若い男性が対象。
・トレーニング種目はレッグエクステンション。
・80%1RMで10レップを4セット。
・トレーニング前後で腱の変化を記録。
・9週間継続。
という実験が行われた結果、
・大腿四頭筋の断面積:7%増加
・膝蓋腱(膝にある腱、しつがいけん)の断面積:3.8%増加
このように「トレーニングは腱を強化させることができる」とのデータが得られました。
しかし一方で「トレーニングを行えど、腱の断面積に変化は見られなかった(腱を強化させることができなかった)」という報告も存在します。
事実先ほど挙げたデータでも、大腿四頭筋の断面積は7%の増加に対し、膝蓋腱の断面積は3.8%の増加と低めです。そのため、断言することはできませんが、
・腱の断面積を増加させるには、トレーニング強度を高め継続期間を長くする必要がある。
のではないかと考察しています。
トレーニングは骨密度を増加させる
骨密度とは?
骨は、主にカルシウムやマグネシウムなどのミネラルで構成されているのですが、これらの構成成分がどれほど詰まっているかを表したものが「骨密度」です。Bone Mineral Densityの頭文字を取り「BMD」と表記される時もあります。
この骨密度が低下し、骨がスカスカになった状態が、いわゆる「骨粗鬆症」です。
詳しくは(こちらの英語文献)を見ていただきたいのですが、骨粗鬆症は骨折のリスクを高めるとされているため、骨密度の増加あるいは減少の抑制を図ることは、健全な生活を送る上で非常に重要となります。
トレーニングが骨密度に及ぼす影響
詳しくは(こちらの英語文献)を見ていただきたいのですが、
・男子大学生が対象。
・彼らを3つのグループに分ける。
・1つ目は高強度(80〜90%1RM)でのトレーニンググループ(以下高強度)。
・2つ目は低強度(30RM)でのトレーニンググループ(以下低強度)。
・3つ目はトレーニングをしないグループ(以下トレ無し)。
・様々な部位の骨密度を測定。
という実験を行った結果、以下のようなデータが得られました。
出典:Tsuzuku S, et al. Effects of high versus low-intensity resistance training on bone mineral density in young males. Calcif Tissue Int. 2001 Jun;68(6)
上のグラフは、全身・腰椎・大腿骨などの骨密度を測定したものとなっており、黒グラフは高強度を、斑点グラフは低強度を、白グラフはトレ無しを表していますが、このように高強度が一番大きな値を記録しました。
高強度と低強度間では全身(Whole body)とTroch(大腿骨上部転子領域)で、高強度とトレ無し間では様々な部位で有意差が確認されましたが、低強度とトレ無し間で有意差が確認されたのはTrochのみとなっております。
トレーニングが高齢者の骨密度に及ぼす影響
詳しくは(こちらの英語文献)を見ていただきたいのですが、
・60〜83歳の健康な男女が対象。
・3つのグループに分ける。
・1つ目は80%1RMでトレーニングを行うグループ(以下高強度)。
・2つ目は50%1RMでトレーニングを行うグループ(以下低強度)。
・3つ目はトレーニングを行わないグループ。
・トレーニング種目はレッグプレスやチェストプレスなど。
・週3回6ヶ月継続。
という実験を行った結果、
・チェストプレスは高強度で16%、低強度で17.5%増加。
・高強度では大腿骨頸部で骨密度が1.96%増加。
・低強度では骨密度の増加は確認されなかった。
というデータが得られました。
もっとも、この実験では骨の形成に関わるとされているタンパク質「オステオカルシン」の分泌量も測定しているのですが、高強度では39%の増加、低強度では25.1%の増加となっています。
このようなデータが得られているため、骨密度を増加させるには高重量のトレーニングがもっとも有効となるでしょう。
トレーニングは高血圧を改善させる
血圧とは?
文字通り「血液が血管壁を押す圧力」が「血圧」です。mmhg(ミリメートル水銀柱)という単位が使われています。
血液は、心臓のポンプ作用により全身へと運ばれていくのですが、心臓が収縮し血液を送り出す際は血圧は高まり、心臓が拡張し血液の流れが緩やかになる際は血圧は下がります。
血圧計(血圧を計る機器)には、最高血圧と最低血圧が表示されていますが、心臓が収縮し血液を送り出す際の血圧が最高血圧、心臓が拡張し血液の流れが緩やかになる際の血圧が最低血圧です。
もっとも、これらは通常「上の血圧(最高血圧)・下の血圧(最低血圧)」と呼ばれています。
高血圧とは?
テレビや雑誌などの情報媒体で「高血圧」という単語を頻繁に耳にしますが、この高血圧は血圧が高くなった状態を指しています。具体的な数値としては、上の血圧が140mmhg/下の血圧が90mmhgどちらか一方でも超えれば高血圧です。
分類 | 上の血圧(mmhg) | 下の血圧(mmhg) |
至適血圧 | 120未満 | 80未満 |
正常値 | 130未満 | 85未満 |
正常高値 | 140未満 | 90未満 |
Ⅰ度高血圧 | 160未満 | 100未満 |
Ⅱ度高血圧 | 180未満 | 110未満 |
Ⅲ度高血圧 | 180以上 | 110以上 |
そして、高血圧は私たちに様々な悪影響をもたらすとされています。
高血圧症とは、血管の中を流れる血液の圧力が強くなり続けている状態です。進行すると血管壁の弾力性やしなやかさが失われ、また血管壁に傷が生じて、その傷にLDLコレステロールなどが沈着すると動脈硬化が促進されます。
(中略)
メタボリックシンドロームは複数のリスクファクターが重なって動脈硬化を進行させるため、高血圧診断基準で正常高値の数値であっても、油断は禁物です。一方で肥満がなくメタボリックシンドロームの基準に当てはまらない場合で、高血圧単独であっても多くの病気を引き起こします。高血圧が進んで動脈硬化になると、狭心症や心筋梗塞・心不全などに進んでいく怖れもあります。また脳では、脳梗塞・脳出血などの脳血管障害を引き起こします。日本人では高血圧から脳梗塞や脳出血にかかる人が、欧米人に比べて格段に多くなっています。引用:厚生労働省
トレーニングが高血圧に及ぼす影響
詳しくは(こちらの英語文献)を見ていただきたいのですが、
・高血圧と診断された男性が対象。
・年齢は平均46歳。
・レッグプレスやチェストプレスなどのトレーニングを実施。
・60%1RMの重量で12回3セット。
・週3回12週間継続。
という実験を行った結果、
・最低血圧:14.8%低下
というデータが得られました。
もっとも、高血圧の改善には塩分の摂取量・飲酒量の見直しも重要でしょうが、トレーニングも有効な手段になることはまず間違い無いでしょう。
まとめ
今回は「健康」という観点から記事を書き綴りましたが、このようにトレーニングは腱を強化させ、骨密度を増加させ、高血圧をも改善させる、との結論に達しました。
しかし注意していただきたいのは、あくまでもこれらの結果は「適切」なトレーニングを行ったゆえである、ということです。
いくら骨密度を増加させるからといって、骨粗鬆症と診断された歩くこともままならない高齢者に、80〜90%1RMの重量を扱わせることはあまりにも危険でしょう。
このブログは「競技におけるレベルのアップ」や「ボディメイク」を目的とされている方向けに配信しているため、健康に関して深く掘り下げることはしませんが「トレーニングには様々な効果が存在する」ということをご理解していただければ幸いです。
さらに詳しく知りたい方用に、トレーニングが骨密度と高血圧に及ぼす影響をまとめた論文のリンクを載せておきますので、興味のある方は是非ご覧ください。