筋力トレーニングの耳寄り情報を発信するブログです。国内外の論文をはじめ、これまでの指導・自身の経験をもとに記事を作成しています。

体幹トレーニングの嘘と本当① フィードフォワード機構

体幹トレーニング」と呼ばれる、体幹に焦点を当てたトレーニング法が、数年前から注目されています。

ジャンプ力や疾走能力、そのほか方向転換能力などのパフォーマンスが飛躍的に向上するとされており、アスリートをはじめ、スポーツを趣味で行う一般の方も、広く取り入れている印象です。

しかし「パフォーマンスが飛躍的に向上する」これは本当でしょうか?

最初に結論から申しますが、体幹トレーニングを行ったとしても、先述したパフォーマンスの飛躍的な向上は正直期待できません

今回の記事は、アスリートに向けて、この体幹トレーニングについて詳しく書き綴っていきますが

・そもそも体幹とは何なのか?
・体幹トレーニングを行う必要はあるのか?

などに触れていくため少し長くなりますので、計4回に分けシリーズ化していくつもりです。

体幹とは?

体幹の定義は、人それぞれで違いがあるかもしれませんが、一般的には「腕や脚を除いた胴体部分」と認識されている印象があります。

「体幹」と検索をかけると、様々な筋トレ系WEBサイトに引っかかりますが、単語は異なれど、どれも同じようなニュアンスで説明されています。

一方で、体幹を「お腹周り(身体の中心部分)」と記述している筋トレ系WEBサイトもちらほら見られるため、少なくともここ日本における体幹とは、

・広義:腕や脚を除いた胴体部分
・狭義:お腹周り(身体の中心部分)

との認識で大きな問題はないでしょう。

体幹が重要視されている理由

例えばですが、

・ヘッド(緑丸)・シャフト(赤丸)・グリップ(黄丸)が、全て鉄で構成されている鉄レンチ
・ヘッド・グリップは鉄だが、シャフトが割り箸で構成されている割り箸レンチ

があった場合、どちらの方がボルトをきつく締め付けることができるでしょうか?

試すまでもなく、鉄レンチの方が、ボルトをきつく締め付けることができます。つまり、割り箸レンチの方が、ボルトをきつく締め付けることができません。

なぜなら、力の伝達経路であるシャフトが割り箸だともろく、発揮された強い力に耐えきることができないためです。

このレンチの例えを私たちの身体に、そしてスクワットに当てはめると、力の伝達経路であるシャフトは体幹に相当します。

力が伝わる部分:バーベル=ボルト
力を伝える部分:バーベルを支える肩や腕=ヘッド(緑丸)
力の伝達経路:体幹=シャフト(赤丸)
力を発揮する部分:下肢の筋群=グリップ(黄丸)

いくら強い力を発揮しようとも、シャフトがもろければボルトに力は伝わりません。同じように、いくら下肢の筋力を発揮しようとも、体幹がもろければまともにバーベルを持ち上げることはできません。

体幹が重要視されている理由は「力の伝達経路」という役割を担っているためです。

フィードフォワード機構

詳しくは(こちらの英語文献)を見ていただきたいのですが、

・健常な男女15名が被験者。
・股関節の屈曲、外転、伸展動作を行ってもらう。
・腹横筋や外腹斜筋・大臀筋などの筋活動を調べる。

という実験を行った結果「どの筋肉よりも、腹横筋が先立って収縮をする」というデータが得られました。腹横筋は、お腹の深部にある、コルセットのような筋肉のことです。

「どの筋肉よりも、腹横筋が先立って収縮をする」このメカニズムは「フィードフォワード機構」と呼ばれており、この機構が起こることで脊柱の安定性が高まり、私たちはスムーズに身体を動かすことが可能になる、と考察されています。

そのため、脊柱の安定性を確保することは「動作の要・基盤になる」とも言えるでしょう。

私なりの体幹の定義

少なくともここ日本における体幹とは、

・広義:四肢を除いた胴体部分
・狭義:お腹周り(身体の中心部分)

との認識で大きな問題はないでしょうと先述しましたが、フィードフォワード機構というメカニズムを踏まえ、私は体幹をもう少し緻密に捉えていまして、

・広義:脊柱
・狭義:腰椎

と定義付けをしています。

そのため「体幹トレーニングとは何か?」と質問された場合は、

脊柱(腰椎)の安定性に関与する筋肉を鍛えるトレーニング

が答えとなり「体幹トレーニングを行う目的は何か?」と質問された場合は、

脊柱(腰椎)の安定性を高める、つまり自身が意図する脊柱(腰椎)の状態をコントロールする能力を身につけること

が答えとなります。

体幹の安定性は重要だけれども…

体幹の安定性が重要であることには、何1つ異論はありません。力の伝達経路であり、動作の要・基盤になるためです。

しかし、例えばオーバーヘッドスクワットなどでは、肩関節や肘関節の安定性も必要となります。先ほどのレンチの話に戻しますが、肩関節や肘関節もシャフトとして捉えることが可能です。

また、いくら体幹の安定性が高かったとしても、下半身の力がなければ元も子もありません。レンチでもそうですが、力のある大人が回すのと力のない子供が回すのでは、締め付けに雲泥の差が出ます。

このような理由から「体幹の安定性は重要ですしかし、そのほかの関節の安定性や純粋な筋力も当然重要になります」と指導をしています。

関連記事

体幹トレーニングの嘘と本当① フィードフォワード機構

体幹トレーニングの嘘と本当② ローカルマッスル(インナーマッスル)

体幹トレーニングの嘘と本当③ グローバルマッスル(アウターマッスル)

体幹トレーニングの嘘と本当まとめ 効果はあるの?ないの?

お知らせ

筋トレ教則本をお読みの皆様、いつもご覧いただきありがとうございます。

当サイトは、今現在記事の更新を行っておりません。

ブログの更新は、下のサイトで行っております。