体幹トレーニングを行うと、ジャンプ力や疾走能力、そのほか方向転換能力などのパフォーマンスが飛躍的に向上するとされていますが、それらは本当なのでしょうか?
なお、今回の記事は体幹トレーニングシリーズの第4回目・まとめとなっています。
(体幹トレーニングの嘘と本当① フィードフォワード機構)
(体幹トレーニングの嘘と本当② ローカルマッスル(インナーマッスル))
(体幹トレーニングの嘘と本当③ グローバルマッスル(アウターマッスル))
をご覧になられてない方は、まずこれらをご覧ください。
結論
最初に結論から申しますが、体幹トレーニングを行ったとしても、先述したパフォーマンスの飛躍的な向上は正直期待できません。
体幹トレーニングを行ってもパフォーマンスの向上は確認できなかった
詳しくは(こちらの英語文献)を見ていただきたいのですが、
・ボート競技を行っている大学生が被験者。
・2つのグループに分ける。
・1つは体幹トレーニングを行うグループ(以下体幹トレ)。
・もう1つはトレーニングを行わないグループ(以下体幹なし)。
・キャットアンドキャメルなどの体幹トレーニングを実施(下の動画を参照)。
・トレーニング期間は8週間で計14〜16回。
・垂直跳びや40m走・メディシンボール投げなどのテストの変化を調べる。
という実験を行った結果「体幹トレーニングを取り入れたとしても、それぞれのテストに有意な変化は確認されなかった」というデータが得られました。
また、詳しくは(こちらの英語文献)を見ていただきたいのですが、様々な体幹トレーニングに関する実験を網羅したこの文献には、
There is little evidence tying core stability to athletic performance.
「体幹の安定性を競技パフォーマンスに結びつける証拠はほとんどない」と記載されています。
それでも、体幹トレーニングは取り入れるに越したことはない
このようなデータがあると、体幹トレーニングを取り入れる必要性はないように感じるかもしれません。が、私はそれでも、体幹トレーニングは取り入れるに越したことはない、と考えています。
なぜなら、基本スポーツ競技には相手がおり、自身のペースで事を運べないからです。
例えば、サッカーで、センタリングからのヘディングを狙っている時、相手とのポジション取りが起こります。
体幹トレーニングでは、確かにジャンプ力や疾走能力、そのほか方向転換能力などのパフォーマンスの向上は期待できないかもしれません。
しかし「体幹の安定性を高める、つまり自身が意図する体幹の状態をコントロールする能力」が高ければ、相手との接触によるぐらつきを軽減させることができるでしょう。
その結果、よりスピーディー、より的確に身体を動かすことができ、相手をかいくぐってうまい具合にボールを捉えることができるはずです。
※体幹トレーニングを行ったとしても、パフォーマンスの飛躍的な向上は正直期待できないため「優先的に、そして重点的に取り入れるものではない。あくまでも補助的に」という位置付けをしています。
そのため、体幹トレーニングを1時間も2時間も行うことはありません。
体幹トレーニングの具体的なメニュー
では、いったいどのような体幹トレーニングを取り入れれば良いのかと申しますと、腹直筋・腹斜筋群・脊柱起立筋などのグローバルマッスルをがっつり鍛えて、ブレーシング力を高めていくものをオススメしています。
体幹トレーニングを行うそもそもの目的は「体幹の安定性を高める、つまり自身が意図する体幹の状態をコントロールする能力を身につけること」であるため、脊柱の4つの動きである、屈曲・伸展・側屈・回旋動作をバランスよく取り入れることが基本です。
もっとも、屈曲と伸展に関しては、オススメ種目である(レッグレイズ)や(ルーマニアンデッドリフト)で行っているため、側屈・回旋動作を指導していくのが通常の流れとなります。
2つですが、実際に取り入れたことのある種目を紹介しますので、ぜひチャレンジしてみてください。
上の動画は、側屈方向に抵抗する能力を身につける種目で「スーツケースキャリー」と呼ばれています。
どちらか一方の手にダンベルやケトルベルを持ち、上体を垂直に保ちながら移動していくエクササイズです。
上の動画は、回旋方向に抵抗する能力を身につける種目で「アンチローテーションチョップ」と呼ばれています。
これは、ゴムチューブやケーブルマシンが必要になるのですが、なかなかに面白いエクササイズです。
バランスボールやバランスディスクを使う必要はない
バランスボールやバランスディスクを使った、巷で流行りのオシャレな体幹トレーニング、つまり腹直筋・腹斜筋群・脊柱起立筋などのグローバルマッスルをがっつり鍛えていくことができないエクササイズを行う必要はありません。
言い換えるのであれば、バランスボール上でのスクワットなど、ブレーシング力を高めていくことができないエクササイズを行う必要はありません。
繰り返しになりますが、体幹トレーニングを行うそもそもの目的は「体幹の安定性を高める、つまり自身が意図する体幹の状態をコントロールする能力を身につけること」であるため、それ相応に負荷をかけていきたいからです。
また「バランスボールやバランスディスク上でのトレーニングは、その不安定さゆえにお腹周りの筋活動を活性化させる」と主張される方もいらっしゃいますが、そうとも限りません。
詳しくは(こちらの英語文献)を見ていただきたいのですが、
・12人のトレーニング経験のある若者男性が被験者。
・スクワット・デッドリフト・オーバーヘッドプレス・アームカールを行ってもらう。
・パターン1は50%1RMの重さで安定した床面上で(以下50)。
・パターン2は75%1RMの重さで安定した床面上で(以下75)。
・パターン3は50%1RMの重さでBOSUバランストレーナーを使い不安定な床面上で(以下BOSU)。
・それぞれのパターンにおける腹直筋・外腹斜筋などの筋活動を調べる。
という実験を行ったところ、
Furthermore, there were no significant differences between the BOSU 50% of 1-RM and stable 50% of 1-RM conditions across all muscles and lifts examined.
引用:Effect of surface stability on core muscle activity for dynamic resistance exercises.
「50とBOSUの間には、すべての筋肉と種目において有意差は見られなかった」という結果が得られました。
また、75とBOSUの間においては「いくつかの筋肉と種目において、75の方が高い値を記録した」というデータも得られております。
このように、不安定な床面上だからといって、筋活動が必ずしも大きくなるわけではないのです。
それなら、不安定な床面上ではなく安定した床面上で行った方が安全かつ効率的でしょう。より高重量を扱える分、例えばスクワットなどでは下半身の筋肉にも強い刺激を入れることが可能だからです。
まとめ
・しかし、あくまでも補助的な位置付けで。
・ドローインを行う必要はない。
・バランスボールやバランスディクなどを使う必要もない。
・腹直筋・腹斜筋群・脊柱起立筋などのグローバルマッスルをしっかり鍛える。
・トレーニング中はブレーシングを意識する。
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