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ベンチプレスを行うと肩が痛くなる人へ 痛みの原因はフォームにあり

  • 2017年7月18日
  • 2020年1月19日
  • 傷害

ベンチプレスを行うと肩が痛くなる」という人は多いのではないでしょうか?事実、私自身も経験がありますし、知人にもちらほら見られます。今回の記事は、その原因と対応策について書き綴っていきます。

最初に結論から申しますが、ベンチプレスを行うと肩が痛くなる原因には「フォーム」が挙げられます。では、いったいどのようなフォームかといいますと、

・バーベルを下ろす位置が高い。
・手幅が広い。
・肩甲骨が離れている。

の3つです。

そのため、

・バーベルを下ろす位置を乳頭とみぞおちの間あたりとやや低くする。
・手幅を肩峰間隔の1.5倍以下とやや狭くする。
・動作中は鉛筆を挟むように常時肩甲骨を寄せる。

以上が対応策となります。

バーベルを下ろす位置を乳頭とみぞおちの間あたりとやや低くする

出典:Kolber MJ, et al. Characteristics of anterior shoulder instability and hyperlaxity in the weight-training population. J Strength Cond Res. 2013 May;27(5):1333-9.

肩関節は、その構造から不安定になるポジションがあります。それが、上の写真のように腕を真横に開き外側にねじった「ハイファイブポジション」いわゆるハイタッチの姿勢です。

詳しくは(こちらの英語文献)を見ていただきたいのですが、このハイファイブポジションでのトレーニングは、肩に痛みを発生させる要因の1つであるということが分かっています。

私自身の経験も含まれるのですが、ベンチプレスを行うと肩が痛くなる人の多くは、鎖骨周辺にバーベルを下ろしています。

「鎖骨周辺にバーベールを下ろす」ということは、腕を真横に開きやや外側にねじる必要があり、結果として、ハイファイブポジションに近い状態でトレーニングを行っているということです。

そのため、ベンチプレスを行うと肩が痛くなる人は、一度確認をしてみましょう。もし、鎖骨周辺にバーベルを下ろしているのであれば「乳頭とみぞおちの間あたり」つまり、いつもよりやや低い位置にバーベルを下ろすようにしてください。

こうすることで脇が閉まり、ハイファイブポジションから遠ざかることが可能です。

手幅を肩峰間隔の1.5倍以下とやや狭くする

詳しくは(こちらの英語文献)を見ていただきたいのですが、手幅が広い「ワイドグリップ」で行うベンチプレスも、肩に痛みを発生させる要因の1つと知られています。

では、具体的にはどれほどの手幅に設定すれば良いのかというと、肩峰間隔の1.5倍以下です。「肩峰」は「けんぽう」と読むのですが、肩の先端にあるぽこっとした出っ張りのことを指します。

詳しくは(経済産業省 調査結果について 主要寸法項目の年代別平均値)を見ていただきたいのですが、この肩峰間隔は成人男性で「40〜41㎝」が平均となっています。そのため「60〜62㎝以下」を目安に手幅を設定するようにしましょう。

もっとも、肩峰間隔には個人差があるため、できることであれば誰かに協力を仰ぎ、一度計測していただくことをオススメします。

ちなみにですが「60〜62㎝がどれくらいかわからないから、メジャーを持って行こうかな」と思われる人もいらしゃると思いますが、そのようなことをしなくてもまず大丈夫です。

ほぼ全てのバーベルには、切れ目のような印が左右に2つ存在します。基本、この間隔は81㎝となっているため、印よりも2㎝ほど内側に小指が来るように握り込めば、手幅は60〜62㎝となります。

動作中は鉛筆を挟むように常時肩甲骨を寄せる

ベンチプレスではバーベルを胸元へと引き寄せるわけですが、この時肩関節には「水平伸展」と呼ばれる運動が起こります。水平伸展では、胸の筋肉である大胸筋と肩の筋肉である三角筋が伸長します。

つまり、バーベルを下ろす局面では、それらの筋肉がグーっと引き伸ばされるわけです。

詳しくは(こちらの日本語文献)を見ていただきたいのですが、肩甲骨の位置は大胸筋に影響を及ぼすことが確認されており「肩甲骨を寄せると大胸筋は伸長する」と考察できるデータがあります。

そのため、

「肩関節の水平伸展」だけや「肩甲骨の寄せ」だけよりも、「肩関節の水平伸展 + 肩甲骨の寄せ」の方が大胸筋は伸長する。

と判断することが可能です。

ベンチプレスではバーベルを胸元へと引き寄せるわけですが、この時肩甲骨が離れていると、大胸筋はあまり伸長しません。結果、三角筋がその分過度に伸長することになり、肩に痛みを発生させる要因となる場合があります。

一方、肩甲骨を寄せていると、大胸筋もしっかりと伸長します。結果、三角筋の過度な伸長を防ぐことができます。

そのため、動作中は「鉛筆を挟むように常時肩甲骨を寄せましょう」と指導しています。

しかし、トレーニング未経験者や初心者の人においては「肩甲骨を寄せる」という動きを意識しにくいこともあるでしょう。

そんな時は「スキャプラ・アダクション」と呼ばれるエクササイズを、ウォーミングアップに取り入れるのがオススメです。下の動画ではゴムチューブを使用していますが、なければ「エア」で問題ありません。

まとめ

ここでは、

・バーベルを下ろす位置を乳頭とみぞおちの間あたりとやや低くする。
・手幅を肩峰間隔の1.5倍以下とやや狭くする。
・動作中は鉛筆を挟むように常時肩甲骨を寄せる。

の3つを対応策として記載しましたが、これらの対応策が必ず有効とは限りません。確かに、ベンチプレスを行うと肩が痛くなる原因には「フォーム」が挙げられますが、それ以外に「過去の傷害歴」なども考えられるためです。

しかし、トライする価値は十分にあると思いますので、ぜひ実践してみてください。

(肩に負担をかける(肩を痛めやすい)筋トレ種目 肩が痛い時の対処法)では「トレーニングと肩の痛み」ついて詳しく書き綴っていますので、併せてご覧ください。