脚を鍛える代表的なトレーニング種目に、レッグエクステンションがあります。
詳しくは上の動画を見ていただきたいのですが、シートに座り、パッドをググッと上に持ち上げていく種目です。
このレッグエクステンションは「スクワットよりも膝への負担が小さいからオススメ」と巷で言われていますが、本当のところどうなのでしょうか?
結論から申しますと、レッグエクステンションは強いせん断力が働くため、膝への負担は大きくなります。あまりオススメしていません。
一方、スクワットはせん断力が抑制され傷害を予防する可能性があるとされています。そのため、老若男女問わずオススメしています。
今回の記事は(こちらの日本語文献)や(こちらの英語文献)を参照にしました。是非一度ご覧ください。
せん断力とは?
まず初めに、せん断力について解説していきますが、これは物体に「ずれ」を起こす力のことです。具体例としては「パンチで紙に穴を開ける」「ハサミで紙を切る」「手で紙を破く」などが該当します。
レッグエクステンションは強いせん断力が働く
レッグエクステンションは、膝関節のみを動かす単関節種目に分類されます。膝関節を曲げた状態から伸ばしていく、つまり「膝関節を伸展させる」トレーニング種目です。
膝関節の伸展には「大腿四頭筋」と呼ばれる太もも前面の筋肉が作用するのですが、先述した通りレッグエクステンションは「膝関節のみを動かす単関節種目」であるがゆえ、大腿四頭筋しか使われません。
そのため、大腿骨に対して、スネの骨である頚骨が前方へと移動するせん断力が強く働きます(赤矢印)。つまりは、下の画像のように、頚骨を前方へとずらす力が働くわけです。
「脛骨の前方へのずれ」は膝にとって好ましいものではなく、膝前十字靭帯への負担が大きくなることで痛みが発生したり、怪我をしていた人は再発する確率が高まることがわかっています。
スクワットはせん断力が抑制される
一方スクワットは、膝関節と股関節を動かす多関節種目に分類されます。「膝関節の伸展にプラスし股関節も伸展させる」トレーニング種目です。
膝関節の伸展には大腿四頭筋が、股関節の伸展には「ハムストリングス」と呼ばれる太もも後面の筋肉と「大臀筋」と呼ばれるお尻の筋肉が作用します。そしてここで重要なのは、ハムストリングスは股関節の伸展作用のほか、膝関節の屈曲作用も担っているということです。
レッグエクステンションでは、膝関節の伸展作用を持つ大腿四頭筋しか使われないため、頚骨が前方へと移動するせん断力が強く働きましたが、スクワットではその大腿四頭筋に加え、膝関節の屈曲作用を担うハムストリングスも使われるため、せん断力は小さくなります。
つまり、ハムストリングスが脛骨を後方に引くため、脛骨の前方へのずれが抑制されるという仕組みです。
ちなみにですが、レッグエクステンションやスクワットと同じく、脚を鍛える代表的なトレーニング種目にレッグプレスと呼ばれるものがあります。
レッグプレスもスクワットと同様「膝関節の伸展にプラスし股関節も伸展させる」トレーニング種目であるため、せん断力は小さくなることがわかっています。
まとめ
・スクワットはせん断力が抑制される→脛骨の前方へのずれが抑制される→ゆえに老若男女問わずオススメしている。
注意していただきたいのですが、なにも「レッグエクステンションを取り入れることは絶対にNGです」と言っているわけではありません。
レッグエクステンションは、ピンポイントで大腿四頭筋を鍛えていくことができますし、スクワットのようにバーベルを担ぐことがないため、腰部に負担がかからないというメリットがあります。
しかし、以前私の知り合いが、大腿四頭筋の強化を図るために高重量でレッグエクステンションを繰り返し実施していたところ「膝に違和感や軽度の痛みを覚えた」という話を聞いたことがあります。
この話だけではなんとも言えませんが、おそらくせん断力の関係でしょう。
そのため、レッグエクステンションをもし取り入れる場合は、スクワットやレッグプレスなどの多関節種目を行った後、つまり「ある程度疲労してから」取り入れることをオススメします。
ある程度疲労してから取り入れることで扱える重量が下がり、せん断力が小さくなるためです。