(スクワット)や(デッドリフト)で腰を丸めることは、基本的にNGとされています。
(フルレンジではなくパーシャルレンジでの筋トレを推奨する時もある)でも軽く触れましたが、腰を丸めると椎間板にかかる圧力が高まり、椎間板ヘルニアを引き起こすリスクを増加させるからです。
今回の記事は「そもそも椎間板とは何なのか?」「そもそも椎間板ヘルニアとは何なのか?」「腰が丸まると、椎間板にかかる圧力はどれくらい高まるのか?」などを少し掘り下げていきたいと思います。
基礎知識
脊柱とS字カーブ
私たちの脊柱(背骨)は、積み木のように積み重ねられた「椎骨」と呼ばれる骨により構成されています。
椎骨は、頭側から「頸椎」「胸椎」「腰椎」「仙骨」「尾骨」に分類されているのですが、S字カーブを描いています。つまり弯曲しています。このS字カーブは「生理的弯曲」と呼ばれており、生活における衝撃を分散する機能を持っています。
なお、この弯曲には前方向に反りがある「前弯」と、後ろ方向に反りがある「後弯」の2種類があります。頚椎及び腰椎は前方向に反りがあるため前弯、胸椎は後ろ方向に反りがあるため後弯です。
椎間板
椎骨と椎骨の間には、コラーゲンを含む軟骨が挟まれているのですが、これが「椎間板」です。
椎間板は構成成分の関係で弾力性に富んでおり、脊柱の動きを滑らかにするほか、椎骨にかかる衝撃を吸収する作用を持っています。イメージとしては、クッションのようなものだと思ってください。
椎間板ヘルニア
椎間板が変形し、組織の一部が後方に飛出したものが「椎間板ヘルニア」です。椎間板ヘルニアは腰椎で多く見られるのですが、後方に飛出した組織の一部が神経を圧迫することで、腰や脚の痛み・だるさ・しびれなどが出てくるとされています。
椎間板ヘルニアを引き起こす要因としては、例えば椎骨や椎間板の老化(加齢)や、もともとの骨配列や骨の形状(遺伝)が挙げられますが、それ以外では「椎間板にかかる圧力」が考えられています。
詳しくは(こちらの英語文献)を見ていただきたいのですが「生活での腰椎に対する累積負荷と、椎間板ヘルニアに関係性が見出された」というデータがあるからです。
そのため、椎間板ヘルニアを引き起こすリスクを下げるためには、椎間板にかかる圧力をできるだけ軽減させる必要が出てくると考察できます。
姿勢と椎間板にかかる圧力
詳しくは(こちらの英語文献)を見ていただきたいのですが、
・椎間板に圧力変換器を取り付ける。
・様々な姿勢をとってもらい、どれほどの圧力が椎間板に生じているかを測定。
という実験が行われました。その結果は以下の通りです。
立位において
「直立姿勢」と「腰を丸めた姿勢」では、腰を丸めた姿勢で2倍の圧力を記録。
座位において
「直立姿勢」と「腰を丸めた姿勢」では、腰を丸めた姿勢で1.3倍の圧力を記録。
重量保持において(重りを持った状態で)
「直立姿勢」と「腰を丸めた姿勢」では、腰を丸めた姿勢で2倍の圧力を記録。
まとめ
「腰を丸めると椎間板にかかる圧力が高まる→椎間板にかかる圧力が高まると、椎間板ヘルニアを引き起こすリスクを増加させる」というデータがあるため、スクワットやデッドリフトで腰を丸めることは、基本的にNGとされているわけです。
ただ、スクワットやデッドリフトの最大挙上重量を競うパワーリフティングなどにおいては、多少腰が丸まっても致し方ないかな、と思う時があります。パワーリフティングでは「それらの種目において、1kgでも重たい重量を持ち上げること」を目的としているためです。
しかし、ほとんどの方においては、スクワットやデットリフトは「ジャンプ力を向上させたい」や「たくましい脚を手に入れたい」などの目的を達成する「手段」「戦略」「ツール」の一つであるはずなので、腰を丸めないよう指導しています。