筋力トレーニングの耳寄り情報を発信するブログです。国内外の論文をはじめ、これまでの指導・自身の経験をもとに記事を作成しています。

フルレンジではなくパーシャルレンジでの筋トレを推奨する時もある

  • 2017年9月8日
  • 2020年1月20日
  • 傷害

(筋トレでは取る可動域で効果は変わるか?可動域を大きく取るべきか?)では「トレーニングでは可動域を大きく取るべき」と記載しました。

なぜなら、

・可動域の大きいスクワットは、可動域の小さいスクワットよりも様々な関節角度で筋力が増加する。
・可動域の大きいスクワットは、可動域の小さいスクワットよりも様々な部位で筋肉量が増加する。
・可動域の大きいスクワットは、可動域の小さいスクワットよりもジャンプ力が増加する。

というデータが得られているためです。

しかし、場合によっては、可動域を小さく取るよう指導する時もあります。全可動域(フルレンジ)ではなく、可動域を一部に制限した(パーシャルレンジ)トレーニングを推奨する時もあります。

では、一体それはどのような時なのでしょうか?

スクワットで腰が丸まる時

上の写真はスクワットを行う女性を写したものですが、写真左、つまり可動域の大きい(深い)スクワットの方が、腰が丸まっているのがわかります。

深いスクワットでは、より大きな股関節の屈曲が要求されるためです。

腰が丸まる姿勢は、椎間板にかかる圧力を増加させます(詳しくはこちらの英語文献を参照)。結果、椎間板ヘルニアなどの傷害を引き起こすリスクを高めます。

詳しくは(こちらの日本語文献)を見ていただきたいのですが、股関節の屈曲における柔軟性は女性よりも男性で、若年よりも高年で乏しくなっているため、高年男性が深いスクワットを行うと、つまりフルレンジでのスクワットを行うと、かなり強く腰が丸まる時があります。

そんな時は、パラレルスクワットやハーフスクワットなどの浅いスクワットを、つまりパーシャルレンジでのスクワットを推奨しています。

ここではスクワットを例に挙げましたが、スクワットと同じ「股関節の屈曲」が要求されるデッドリフトやグッドモーニングも同様です。

ベンチプレスで肩が痛い時

詳しくは(こちらの英語文献)を見ていただきたいのですが、ベンチプレスにおいて腕が胴体の後方まで下降された場合は、肩の傷害を引き起こす原因になるとされています。

つまるところ、バーベルをしっかり胸元へと下ろすフルレンジでのベンチプレスは、相応の危険性を孕んでいるということです。

もっとも、私は(ベンチプレスを行うと肩が痛くなる人へ 痛みの原因はフォームにあり)で記載した通り、

・バーベルを下ろす位置を乳頭とみぞおちの間あたりとやや低くする。
・手幅を肩峰間隔の1.5倍以下とやや狭くする。
・動作中は鉛筆を挟むように常時肩甲骨を寄せる。

以上の3点を取り組めば、肩への負担を相当量軽減させることができると踏んでいるため、基本的にはフルレンジでのベンチプレスをオススメしています。

しかし、この3点を取り組んでいるにも関わらず、肩に若干の痛みがある時や「痛み」までとはいかなくても違和感を感じる時には、下の写真のようにタオルなどを置いて、バーベルをしっかり胸元へと下ろさないベンチプレスを、つまりパーシャルレンジでのベンチプレスを推奨しています。

出典:Kolber MJ, et al. Shoulder injuries attributed to resistance training: a brief review. J Strength Cond Res. 2010 Jun;24(6):1696-704.

ここではベンチプレスを例に挙げましたが、ベンチプレスと同じ肩関節の動き(肩関節の水平伸展)が要求されるダンベルプレスも同様です。

まとめ

このように「スクワットで腰が丸まる時」や「ベンチプレスで肩が痛い時」では、フルレンジではなくパーシャルレンジでのトレーニングを推奨しています。

しかし、納得できる理由がない限りは、やはり可動域を大きく取るべきです。フルレンジでのトレーニングを取り入れるべきです。

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