(筋トレでは取る可動域で効果は変わるか?可動域を大きく取るべきか?)では「トレーニングでは可動域を大きく取るべき」と記載しました。
なぜなら、
・可動域の大きいスクワットは、可動域の小さいスクワットよりも様々な部位で筋肉量が増加する。
・可動域の大きいスクワットは、可動域の小さいスクワットよりもジャンプ力が増加する。
というデータが得られているためです。
しかし、場合によっては、可動域を小さく取るよう指導する時もあります。全可動域(フルレンジ)ではなく、可動域を一部に制限した(パーシャルレンジ)トレーニングを推奨する時もあります。
では、一体それはどのような時なのでしょうか?
スクワットで腰が丸まる時
上の写真はスクワットを行う女性を写したものですが、写真左、つまり可動域の大きい(深い)スクワットの方が、腰が丸まっているのがわかります。
深いスクワットでは、より大きな股関節の屈曲が要求されるためです。
腰が丸まる姿勢は、椎間板にかかる圧力を増加させます(詳しくはこちらの英語文献を参照)。結果、椎間板ヘルニアなどの傷害を引き起こすリスクを高めます。
詳しくは(こちらの日本語文献)を見ていただきたいのですが、股関節の屈曲における柔軟性は女性よりも男性で、若年よりも高年で乏しくなっているため、高年男性が深いスクワットを行うと、つまりフルレンジでのスクワットを行うと、かなり強く腰が丸まる時があります。
そんな時は、パラレルスクワットやハーフスクワットなどの浅いスクワットを、つまりパーシャルレンジでのスクワットを推奨しています。
ここではスクワットを例に挙げましたが、スクワットと同じ「股関節の屈曲」が要求されるデッドリフトやグッドモーニングも同様です。
ベンチプレスで肩が痛い時
詳しくは(こちらの英語文献)を見ていただきたいのですが、ベンチプレスにおいて腕が胴体の後方まで下降された場合は、肩の傷害を引き起こす原因になるとされています。
つまるところ、バーベルをしっかり胸元へと下ろすフルレンジでのベンチプレスは、相応の危険性を孕んでいるということです。
もっとも、私は(ベンチプレスを行うと肩が痛くなる人へ 痛みの原因はフォームにあり)で記載した通り、
・手幅を肩峰間隔の1.5倍以下とやや狭くする。
・動作中は鉛筆を挟むように常時肩甲骨を寄せる。
以上の3点を取り組めば、肩への負担を相当量軽減させることができると踏んでいるため、基本的にはフルレンジでのベンチプレスをオススメしています。
しかし、この3点を取り組んでいるにも関わらず、肩に若干の痛みがある時や「痛み」までとはいかなくても違和感を感じる時には、下の写真のようにタオルなどを置いて、バーベルをしっかり胸元へと下ろさないベンチプレスを、つまりパーシャルレンジでのベンチプレスを推奨しています。
出典:Kolber MJ, et al. Shoulder injuries attributed to resistance training: a brief review. J Strength Cond Res. 2010 Jun;24(6):1696-704.
ここではベンチプレスを例に挙げましたが、ベンチプレスと同じ肩関節の動き(肩関節の水平伸展)が要求されるダンベルプレスも同様です。
まとめ
このように「スクワットで腰が丸まる時」や「ベンチプレスで肩が痛い時」では、フルレンジではなくパーシャルレンジでのトレーニングを推奨しています。
しかし、納得できる理由がない限りは、やはり可動域を大きく取るべきです。フルレンジでのトレーニングを取り入れるべきです。