「重要なことだけど扱い辛い」といいますか「大人の世界」といいますか、少し突っ込んだ記事を書き綴っていきたいと思います。
「性行為は運動能力を低下させる。その結果、トレーニングの質を下げ、競技パフォーマンスにも悪影響をもたらす。ゆえに、ここぞという場面では控えるべき」といったセリフを、皆様も一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?
このような情報が広く信じられている背景には、いくつかの理由があるとされているのですが、その中でも代表的なものとしては、著名なアスリートの証言が挙げられます。
世界的に名をはせたボクサーの1人(モハメド・アリ)は「性行為を控えることで攻撃性が増す」とし「試合の6週間前から控える」と公言しています。
しかし「性行為は運動能力を低下させる」これは本当なのでしょうか?
今回は「性行為」と「運動能力」の関係性について触れていきますが、最初に結論から申しますと「性行為は、運動能力の短期的な障害を引き起こさない」つまり「性行為は運動能力に影響を及ぼさない」というデータが存在します。
論文を見てみる
タイトル
(The Influence of Sexual Activity on Athletic Performance)
研究内容
・7人の男性(平均年齢:26.8歳)と1人の女性(36歳)が被験者。
・3つのパターンを用意し翌日体力測定を行う。
・体力測定の項目は垂直跳び(Vertical Jump)・腕立て伏せ回/分(Push-Ups)・握力(Hand Grip Strength)など。
・1つ目は、測定前夜何も行わないパターン(以下Baseline)。
・2つ目は、測定前夜性行為を行うパターン(以下Sex)。
・3つ目は、測定前夜性行為と同じエネルギー消費量となるヨガを行うパターン(以下Yoga)。
結果
体力測定の項目すべてにおいて、パターン間で有意な差は確認されませんでした。しかしながら、握力(図右下)に関しては、SexとYogaで増加傾向が観察されております。
結論としては「性行為は、運動能力の短期的な低下を引き起こさない」とのことです。
ちなみにですが、パターン間で睡眠時間に有意な差はなく(6.5〜7.5時間)、Sexでは全ての被験者がオーガズムに達しております。
私見
ここでは「性行為」と「運動能力」の関係性について調べた研究を紹介しましたが「トレーニングの質を下げる」「競技パフォーマンスに悪影響をもたらす」と考察できるデータは得られませんでした。
もっとも、測定前夜以前における性行為については、特にこれといった指定はされていないため、例えば「測定1週間前から何も行わないパターン」や「測定1週間前から継続して性行為を行うパターン」なんかでは、また違った結果となってくるかもしれません。
しかしながら、14名の元アスリートを対象にした研究では「測定前夜に性行為を行うパターンと、測定6日前夜に性行為を行うパターンとでは、握力に影響を及ぼさない」というデータが得られているため、少なくとも前夜までの性行為であれば(具体的には10時間前)、トレーニングの質を下げたり、競技パフォーマンスに悪影響をもたらすといったことはないのではないか、と考えています(詳しくはこちらの英語文献を参照)。
まとめ
・具体的な運動能力としては垂直跳び・腕立て伏せ回/分・握力など。
・むしろ握力に関しては性行為を行うことで増加傾向が観察されている。
「性行為」と「運動能力」の関係性について調べた研究は、ほぼ見つけることができませんでした。面白いものを見つけましたら、追って紹介したいと思います。