筋トレ前の準備運動の仕方 Part.2 ダイナミックストレッチ

 

前回、トレーニング前の準備運動として「まずは身体を温めよう」「Active Warm UP(アクティブウォームアップ)を行いましょう」と記載しました。

身体を温めること=筋温を上昇させることによって、

・パフォーマンスが向上する。
・傷害を予防する可能性がある。

というデータが存在するためです。

しかし、アクティブウォームアップだけでは、トレーニング前の準備運動としては不十分です。

今回の記事は、アクティブウォームアップの次に行ってもらいたい準備運動について書き綴っていきます。

準備運動第2段階:次は関節可動域を広げよう

トレーニング前の準備運動として、アクティブウォームアップの次は、関節可動域を広げることをオススメしています。

論文を見てみる

詳しくは(こちらの英語文献)を見ていただきたいのですが、

・男子大学生が対象。
・2つのグループに分ける。
・1つは膝関節の屈曲角度が120°のディープ(深い)スクワット、つまり可動域を大きく取るグループ(以下可動大)。
・1つは膝関節の屈曲角度が60°のシャロウ(浅い)スクワット、つまり可動域を小さく取るグループ(以下可動小)。
・それぞれの1RMを計測し週3回12週間トレーニングを実施。
・トレーニング内容は曜日により異なるが3RMから12〜13RMの重量を使用。
・筋力や筋肉量・ジャンプ力にどのような影響を及ぼすのか調べる。

という実験が行われた結果、

・可動域を大きく取るスクワットは、可動域を小さく取るスクワットよりも様々な関節角度で筋力が増加する。
・可動域を大きく取るスクワットは、可動域を小さく取るスクワットよりも様々な部位で筋肉量が増加する。
・可動域を大きく取るスクワットは、可動域を小さく取るスクワットよりもジャンプ力が増加する。

というデータが得られました。

また、スクワットでなくアームカールでも似たような実験が行われているのですが、筋力・筋肉量ともに同様の結果が得られております(詳しくはこちらの英語文献を参照)。

(筋トレでは取る可動域で効果は変わるか?可動域を大きく取るべきか?)では、上に挙げた実験の詳細を記載していますので、ぜひご覧ください。

このように、関節可動域を大きく取れば、筋力・筋肉量・ジャンプ力などにおいて、より大きな効果を得ることができます。そのため、次は関節可動域を広げることをオススメしているわけです。

関節可動域を広げる2つの方法

では、一体どのようにして関節可動域を広げれば良いのかと申しますと、その方法は大きく2つあります。それが「Static Stretch(スタティックストレッチ)」と「Dynamic Stretch(ダイナミックストレッチ)」です。

スタティックストレッチは「静的ストレッチ」とも呼ばれており「長座前屈」「開脚前屈」などが該当します。おそらく全ての方が経験をしていると思うのですが「筋肉をグググと伸ばし、痛気持ちいところで数10秒関節を固定する(その状態をキープする)」これが、スタティックストレッチです。

一方、ダイナミックストレッチは「動的ストレッチ」とも呼ばれており「ウォーキングランジ」「ニートゥチェスト」などが該当します。これも、おそらく全ての方が経験をしていると思うのですが「関節を大きく動かしながらも、筋肉を伸ばす」これが、ダイナミックストレッチです。

なお(日本ストレッチング協会)は、ダイナミックストレッチを以下のように定義しています。

対象となる筋群の拮抗筋群を意識的に収縮させ、関節の曲げ伸ばしや回旋などといった関節運動を行うことで筋や腱を引き伸ばしたり、実際のスポーツあるいは運動を模した動作を取り入れることでそれぞれの動きに特異的な柔軟性を向上させたり、利用される筋群間の協調性を高めることなどを目的として行うストレッチ方法の一つである。

もっとも、ダイナミックストレッチに関しては、文章だけの説明ではわかりにくいと思いますで、下に写真を載せておきます。

どちらのストレッチを取り入れるべきか?

「関節可動域を広げる」を目的とした運動は「Mobility Drill(モビリティドリル)」と呼ばれているのですが、モビリティドリルとしては、どちらのストレッチを取り入れるべきなのでしょうか?

詳しくは(こちらの英語文献)を見ていただきたいのですが、

・20歳前後の健康な男性が対象。
・彼らに下肢のストレッチを行ってもらう。
・2つパターンを用意。
・1つはスタティックストレッチを行ってもらうパターン(以下SS)。
・1エクササイズあたり10秒×2セット。
・もう1つはダイナミックストレッチを行ってもらうパターン(以下DS)。
・1エクササイズあたり10回×2セット。
・下肢の関節可動域を計測。

という実験が行われました。なお、それぞれのストレッチにおけるエクササイズの一例を載せておきます。

出展:Vasileiou, N, et al. The acute effect of static or dynamic stretching exercises on speed and flexibility of soccer players. J Sport Human Perf 2013;1(4):31-42.

その結果は以下の通りです。

・両パターンで関節可動域は増加。
・股関節屈曲はSSで4.3%、DSで5.1%増加。
・股関節外転はSSで12.3%、DSで14.3%増加。
両パターンで有意差は見られない

また、詳しくは(こちらの日本語文献)も見ていただきたいのですが、

・20歳前後の健康な女性が対象。
・彼女らに足関節のストレッチを行ってもらう。
・3つパターンを用意。
・1つはストレッチを行わないパターン(以下NS)
・1つは2分スタティックストレッチを行ってもらうパターン(以下SS)。
・1つは20回ダイナミックストレッチを行ってもらうパターン(以下DS)。
・足関節の関節可動域をストレッチ直後・5分後・10分後に計測。

という実験が行われました。その結果は以下の通りです。

・SSおよびDSは直後から10分後にかけて関節可動域が増加。
・直後はSSで3.5 ± 3.3°、DSで1.8 ± 1.3°の増加とSSの方が大きい。
・SSは5分後・10分後の関節可動域に変化がなかったのに対し、DSは10分後まで徐々に増加。
・10分後にはSSが3.8 ± 3.6°、DSが3.4 ± 1.5°関節可動域は増加し、有意差はなくなった

出展:静的および動的ストレッチング後に生じる足関節可動域と筋力の経時的変化

もっとも、測定する部位やエクササイズ内容によって結果は変わってくるかもしれませんが、少なくともこのようなデータがあるため、モビリティドリルとしては、スタティックストレッチ・ダイナミックストレッチどちらを取り入れても良さそうです。

なお「DSは10分後まで徐々に増加」これの理由としては「身体を動かす→筋肉への血液量が増加→筋温が上昇→筋硬度が減少→関節可動域が増加」と考察されています。

個人的にはダイナミックストレッチがオススメ

「モビリティドリルとしては、スタティックストレッチ・ダイナミックストレッチどちらを取り入れても良さそうです」と記載しましたが、実はスタティックストレッチには、デメリットが生じることがわかっています。

これは、様々な筋トレ系WEBサイトで触れられているため、すでにご存知の方も多くいらっしゃると思いますが、その1つが「筋力の低下」です。

例えば、先ほど紹介した女性を対象にした実験では、足関節の関節可動域のほか「足関節の筋力」も測定しているのですが、その結果がこちらです。

・SSは直後に–22.0 ± 61.3N、10分後に–30.4 ± 87.1N と低下。
・DSは直後に20.5 ± 66.7N、10分後に19.3 ± 56.9Nと増加。

出展:静的および動的ストレッチング後に生じる足関節可動域と筋力の経時的変化

発揮される筋力が低下すれば、大きな重量を扱いトレーニング行うことはできません。結果、トレーニングの効果が薄れてしまうと考察できます。

詳しくは(こちらの英語文献)を見ていただきたいのですが、

・25歳前後の男性が対象。
・彼らにトレーニングを行ってもらう。
・種目はレッグエクステンション。
・80%1RMの重量を扱い潰れるまでを4セット。
・2つのパターンを用意。
・トレーニングだけを行うパターン(以下TR)。
・トレーニングの前にスタティックストレッチを行うパターン(以下SS)。
・スタティックストレッチは25秒を2セット。
・週2回のペースで10週間継続。

という実験が行われた結果、

大腿四頭筋の断面積
・TR:12.7 ± 7.2%増加。
・SS:7.4 ± 3.7%増加。

このように「スタティックストレッチを行うと、筋肥大の効果が薄れる」というデータが実際に得られております。

また、スタティックストレッチは、筋力だけではなくそのほか様々なパフォーマンスも低下させることが確認されています(詳しくはこちらの英語文献を参照)。

これらのデータがあるため、トレーニング前の準備運動(モビリティドリル)としては、ダイナミックストレッチを取り入れることをオススメしてるわけです。

ちなみに、スタティックストレッチを行うことによって生じる筋力の低下は「鎮静作用による神経系への影響」が理由の1つと考察されています(詳しくはこちらの日本語文献を参照)。

ダイナミックストレッチマニュアル

「トレーニング前の準備運動(モビリティドリル)としては、ダイナミックストレッチを取り入れることをオススメしてる」と記載しましたが、では一体「種目」「回数」「セット間休憩時間」などはどうすれば良いのでしょうか?

種目

まずは種目についてですが、これは「その日のトレーニングで使う関節」を見極め、それらの関節を集中的に動かす種目をオススメしています。

例えばですが、上の写真にある「スクワット」と「ルーマニアンデッドリフト」の2つを行うのであれば「股関節」を集中的に動かす種目を取り入れる、ということです。

もっとも、私は上の2つに加えベンチプレス・ラットプルダウン・レッグレイズの計5つを指導することが多いため「股関節」と「肩関節(肩甲骨)」を集中的に動かす種目を基本的には取り入れています。

具体的な種目としては、

股関節:スパイダーマンランジ

肩関節(肩甲骨):ソラシックローテーション(四つ這い姿勢)

などです。

トレーニング内容や個人によって変動はありますが、トータルとしては4種目〜程度でしようか。

なお、先ほどダイナミックストレッチの例として「ウォーキングランジ」「ニートゥチェスト」を紹介しましたが、これらは「移動」を伴うため、指導することはほとんどありません。スポーツジムによっては、移動するスペースを確保できないこともあるためです。

回数・セット間休憩時間

次は回数についてですが「10回/2セット(計20回)」をオススメしています。

10回/2セット(計20回)で関節可動域は増加する、というデータはすでに得られていますし、一方でセット数(回数)を増やしすぎると「疲労がたまり、トレーニングに悪影響を及ぼす」と考察できるデータが存在するため、これくらいがベストではないかと考えています(詳しくはこちらの英語文献を参照)。

先ほど紹介した「スパイダーマンランジ」「ソラシックローテーション」を例にとると、

1.スパイダーマンランジ(右脚前):10回
2.スパイダーマンランジ(左脚前):10回
3.スパイダーマンランジ(右脚前):10回
4.スパイダーマンランジ(左脚前):10回
5.ソラシックローテーション(右側):10回
6.ソラシックローテーション(左側):10回
7.ソラシックローテーション(右側):10回
8.ソラシックローテーション(左側):10回

となります。

もっとも、詳しくは(こちらの日本語文献)を見ていただきたいのですが、ダイナミックストレッチの実施回数(10回・20回・30回)が関節可動域にどのような影響を及ぼすかを調べた実験では「30回群において有意に高値を示した」との報告があるため、関節可動域に不安のある部位に関しては「15回/2セット」や「10回/3セット」でも良いかもしれません。

セット間休憩時間についてですが、これに関しては特に指定していません。つまり、セット間休憩時間を特に取っていません。あくまでも「トレーニング前の準備運動」であるため、種目の強度は低く設定していますし、セット間休憩時間を取らないことで、少しでも身体を温めること=筋温を上昇させることができれば「なお良し」と思っているためです。

ちなみにですが、所用時間は10分程度になります。

 

最後に

「トレーニング前の準備運動(モビリティドリル)としては、ダイナミックストレッチを取り入れることをオススメしてる」と記載しましたが、注意していただきたいのは「スタティックストレッチを取り入れてはダメ!」というわけではないということです。

これは個人的な経験論になるのですが、今から10年ほど前私は交通事故に巻き込まれ、足関節を怪我しました。怪我の度合いは決して軽いとはいえず、入院期間は2ヶ月半、手術回数は計3回、スムーズに走れるようになるまで6ヶ月を要しました。

もちろん、今は問題なく生活できているのですが、やはり後遺症のせいか足関節の関節可動域が平均男性よりも狭くなっており、足関節の背屈が求められるエクササイズの局面(クリーンやスナッチのスタートポジション)では、いくらダイナミックストレッチを行おうとも、窮屈さを強く感じていました。

日本ウエイトリフティング協会指導教本2015より引用

しかし、理学療法士に教えてもらったスタティックストレッチを取り入れると、その窮屈さがほぼなくなりました。つまり、足関節の背屈可動域が広がった、ということです。

もっとも、角度にすると「2°前後」とわずかなものかもしれませんが、その2°が私にとっては非常に大きな変化でした。窮屈さがほぼ感じられなくなったため、シャフトの軌道など違うところに意識を集中させることが可能となり、より適切なフォームで実施することができるようになったのです。

そのため、確かにトレーニング前の準備運動(モビリティドリル)としては、ダイナミックストレッチを取り入れることをオススメしてはいますが、このように何らかの理由(関節可動域が広がることで、より適切なフォームで実施できるなど)がある場合は、むしろ積極的に取り入れても良いのではないかと思います。

次回は、準備運動第3段階について書き綴っていきます。ご期待ください。

 

関連記事

(筋トレ前の準備運動の仕方 Part.1 アクティブウォームアップ)

(筋トレ前の準備運動の仕方 Part.2 ダイナミックストレッチ)

(筋トレ前の準備運動の仕方 Part.3 特異的ウォームアップ)

(筋トレ前の準備運動の仕方 まとめ)

 

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