適切なトレーニングを行えば、まず間違いなく筋肉はつきます。筋肉に刺激が入り、その環境に適応するためです。一方、トレーニングを中断すると(筋肉に刺激を入れないと)、逆に筋肉は落ちます。おそらく、皆様にもご経験があるのではないでしょうか?
では一体、どれくらいトレーニングを中断すると筋肉は落ちるのでしょうか?
最初に結論から申しますと「トレーニング歴」や「筋線維組成の割合」そのほか「生活強度」「栄養状態」など個人や状況によって差がありますが「早ければ2週間、1ヶ月もあれば筋肉は落ちる」と巷では言われています。
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トレーニングを中断した際の筋肉への影響を調べた研究は、もうすでにいくつかあります。
例えば(こちらの研究)では、定期的な運動をしていない大学生を対象としているのですが、大腿四頭筋の筋肉量(※厳密には筋断面積)は「トレーニングを中断してから1ヶ月後に5.4%減った」というデータが得られました。
一方(こちらの研究)では、先ほどとは違いパワー系アスリートを対象としているのですが、大腿四頭筋の筋肉量(※厳密には筋断面積)は「typeⅠ線維(遅筋)に変化はなかったが、typeⅡ線維(速筋)はトレーニングを中断してから2週間後に6.4%減った」というデータが得られました。
このようなデータがあるため「早ければ2週間、1ヶ月もあれば筋肉は落ちる」と巷では言われているわけです。
グリコーゲンが原因?
「早ければ2週間、1ヶ月もあれば筋肉は落ちる」と先述しましたが「本当は筋肉が落ちているわけでは無く、筋肉中に含まれているグリコーゲンの貯蔵量が少なくなって、筋肉が落ちたように見えるだけ」という見解もあります。
グリコーゲンは、私たちの体を動かすエネルギー源なのですが、一定量筋肉中に蓄えられています。体重60kgの方では、おおよ240gです。
そしてこのグリコーゲンは、トレーニングを中断すると貯蔵量が一気に少なくなるとのデータがあるのです(詳しくはこちらの英語文献を参照)。
「水分をたくさん吸ったワカメが乾燥して小さくなった」をイメージするとわかりやすいかもしれません。
筋肉が落ちたの?グリコーゲンなの?
では、結局のところ真実はどうなのかというと、これははっきり断言することはできません。しかし、これまでの科学的知見や経験をもとにするならば、個人的には
・筋肉中に含まれているグリコーゲンの貯蔵量が少なくなって、筋肉が落ちたように見えるだけ。
・もちろん、寝たきりの生活や食事を過度に制限している場合では、2週間でも筋肉は落ちる。
・ごくごく通常の生活を送り、栄養をしっかり行っていても、トレーニングを1ヶ月間中断すると筋肉は落ちるかもしれない。
・しかし、そこまで劇的に落ちるわけでは無い。
・ごくごく通常の生活を送り、栄養をしっかり行っていても、トレーニングを2ヶ月間中断すると筋肉はまず落ちるだろう。
このように考えています。