筋力トレーニングの耳寄り情報を発信するブログです。国内外の論文をはじめ、これまでの指導・自身の経験をもとに記事を作成しています。

筋トレでの呼吸の仕方 呼吸はするべきか止めるべきか? バルサルバ法について

今回の記事は、トレーニングを行う際の呼吸の仕方について書き綴っていきます。

最初に結論から申しますが、例えば高血圧による動脈硬化など、血管機能に何らかの疾患がある方に対しては「エキセントリック局面で息を吸い、コンセントリック局面で息を吐くように」と指導しています。

スクワットを例に挙げると、筋肉を伸長させる時、つまり「しゃがむ時」に息を吸い、筋肉を短縮させる時、つまり「立ち上がる時」に息を吐くということです。

一方、血管機能に疾患がない方に対しては「大きく息を吸い、止めた状態で動作を行うように」と指導しています。

血管機能に何らかの疾患がある方

トレーニング中は血圧が急上昇する

種目や扱う重量、そのほかレップ数などによって変わってはくるのですが、トレーニング中は、特にコンセントリック局面(ググッと力を入れる局面)で血圧が急上昇することが確認されています。

詳しくは(こちらの英語文献)を見ていただきたいのですが、この実験ではレッグプレス(シングル・ダブル)の動作中における血圧を測定しており、その結果が以下の通りです。

出典:MacDougall JD, et al. Arterial blood pressure response to heavy resistance exercise. J Appl Physiol (1985). 1985 Mar;58(3):785-90.

上のグラフは、シングルレッグプレスにおける95%1RMの重量で、ダブルレッグプレスを行った際の平均血圧及び心拍数を表したものになっているのですが、平均血圧は最も高いところで300mmhgを越えています。赤矢印のところです。

トレーニング中の血圧の急上昇度合いは呼吸の仕方で変わる

トレーニング中は、このように血圧が急上昇することがわかりましたが、この血圧の急上昇度合いは、呼吸の仕方で変わることが確認されています。

詳しくは(こちらの英語文献)を見ていただきたいのですが、

・18〜36歳の男性が対象。
・トレーニングを行ってもらう。
・トレーニング種目はレッグエクステンションとシングルアームカール。
・扱う重量は10RM。
・呼吸の仕方を3パターン用意。
・パターン1はエキセントリック局面で息を吐き、コンセントリック局面で息を吸う。
・パターン2はエキセントリック局面で息を吸い、コンセントリック局面で息を吐く。
・パターン3は大きく息を吸い止める。
・トレーニング中の血圧を測定。

という実験が行われた結果、パターン3の大きく息を吸い止めるで最も高くなることがわかりました。なお、パターン1とパターン2に関しては「同等である」という結論に至っております。

結論

血管機能に何らかの疾患がある場合は、トレーニング中の血圧の急上昇が、人体に悪影響を及ばす可能性があります

そのため「大きく息を吸い止める」ではなく、トレーニング中の血圧の急上昇度合いが低い「エキセントリック局面で息を吸い、コンセントリック局面で息を吐くように」と指導しているわけです。

ちなみにですが「エキセントリック局面で息を吐き、コンセントリック局面で息を吸う」という逆のパターンではダメなのですか?と質問を受けることがごく稀にあるのですが、この呼吸の仕方に関してはあまりオススメしていません。

詳しくは(こちらの英語文献)を見ていただきたいのですが、息を吐きながら力を入れる場合と、息を吸いながら力を入れる場合では「息を吐きながら力を入れる場合の方が、発揮される筋力は大きかった」というデータが得られているためです。

血管機能に疾患がない方

「大きく息を吸い止める」という呼吸の仕方は「バルサルバ法」と呼ばれているのですが、このバルサルバ法は「トレーニング中の血圧が最も高くなる」と記載しました。

しかし、バルサルバ法はこのようなデメリットがある一方で、しっかりとしたメリットも存在します。

「呼吸」「腹圧」「体幹の安定性」について

私たちのお腹には、胃や肝臓といった臓器が存在していますが、これら臓器は腹膜と呼ばれる膜組織に覆われています。「スーパーのレジ袋に何個もの水風船をぎっしりと詰め込んだ状態」とイメージするとわかりやすいかもしれません。

そして、腹膜に囲まれた空間は「腹腔」(ふっこう・ふっくう)と呼ばれており、腹腔の内から外に向けて生じている圧力が腹圧です。

詳しくは(こちらの英語文献)を見ていただきたいのですが、この腹圧は大きく息を吸い止める、つまり「いきむ」ことによって増加することが確認されており、腹圧が増加すればするほど、それに伴い体幹の安定性も高まることがわかっています(詳しくはこちらの英語文献を参照)。

シンプルにまとめると、

大きく息を吸い止める→腹圧が増加する→体幹の安定性が高まる

という流れです。

体幹の安定性を高めることは非常に重要

体幹の安定性を高めることは、トレーニングを行う上で非常に重要です。

体幹の安定性が低ければ、

・フォームに乱れが生じる
・腰椎などに傷害を発生させるリスクが増加する
・力の伝達率が下がる

などが起こると予想できます。

一方、体幹の安定性が高ければ、

適切なフォームで動作を行える
腰椎などに傷害を発生させるリスクが軽減する
力の伝達がより効率化する

などが期待できます。

結論

確かに、バルサルバ法は「トレーニング中の血圧が最も高くなる」というデメリットがあるのですが、このように「体幹の安定性が高まる」というメリットも存在します。

また「正常の内弾性板は、血圧600mmHgまでの圧に耐えることができる、動脈壁の一番強い構造」との報告もあります(こちら)。

そのため、血管機能に疾患がない場合は「大きく息を吸い、止めた状態で動作を行ってもらうように」と指導しているわけです。

なお(体幹トレーニングの嘘と本当② ローカルマッスル(インナーマッスル))では「呼吸」「腹圧」「体幹の安定性」についてもう少し詳しく記載していますので、興味のある方は是非ご覧ください。

まとめ

血管機能に何らかの疾患がある方
・エキセントリック局面で息を吸い、コンセントリック局面で息を吐くように。
血管機能に疾患がない方
・大きく息を吸い、止めた状態で動作を行うように。

と指導していますが、いくら血管機能に疾患がない方とは言えど、バルサルバ法を駆使することによって「頭痛がしてきた」や「おー、ちょっと失神しそうになった汗」のような経験をお持ちの方を何人か知っています。

そのため、バルサルバ法を取り入れることに不安のある方や、体調が優れない時などは「エキセントリック局面で息を吸い、コンセントリック局面で息を吐くように」と指導する場合もあります。