筋力トレーニングの耳寄り情報を発信するブログです。国内外の論文をはじめ、これまでの指導・自身の経験をもとに記事を作成しています。

筋トレ知識 モーメントアームとトルクとは?

例えば、レンチでボルトを締め付けようとした際、

1.ボルトから近い位置を握りレンチを回す。
2.ボルトから遠い位置を握りレンチを回す。

どちらの方が、きつく締め付けることができるでしょうか?

モーメントアーム

回転軸と力の作用線を結んだ垂直距離は「モーメントアーム」と呼ばれており、下の写真では、黄矢印がそれに該当します。なお、写真に写っている他の印は以下の通りです。

緑丸:回転軸=肩関節
赤矢印:力の作用線=ダンベルの重力線
黄矢印:モーメントアーム=肩関節とダンベルの重力線を結んだ垂直距離

上の男性は、肩周りを鍛えるトレーニング種目を行っているのですが、腕を約45°持ち上げている写真左の状態(以下45°)よりも、腕を床と水平まで持ち上げている写真右の状態(以下水平)の方が、モーメントアームが長くなっているのがわかります。

モーメントアームの長さは「回転軸に生じる回転力」を決定する要因となっており、モーメントアームが長くなるほど、それも大きくなるという仕組みです。

そのため、45°よりも水平の方が、肩周りの筋群により強い刺激を与えることになります。なぜなら、モーメントアームが長くなることで、回転軸である肩関節に大きな回転力が生じ、それに抵抗する筋力が必要になってくるからです。

レンチの話に戻りますが、ボルトから近い位置を握りレンチを回すのと、ボルトから遠い位置を握りレンチを回すのでは、圧倒的に後者の方がきつく締め付けることができます。

なぜなら、モーメントアームが長くなることで、より大きな回転力がボルトに生じるためです。

トルク

回転軸に生じる回転力は「トルク」と呼ばれているのですが、このトルクは、モーメントアームと「力」つまり「扱う重量」との積と定義されており、

トルク=モーメントアーム×力(扱う重量)

という式が成り立ちます。

そのため、例えば全く同じエクササイズ&フォームで、5kgのダンベルと10kgのダンベルを持ち上げたとした場合、10kgの方がより強い刺激を筋肉に与えることになります。

なぜなら、モーメントアームの長さが等しかったとしても、力(扱う重量)が大きいため、回転軸である関節に大きなトルクが生じ、それに抵抗する筋力が必要になってくるからです。

まとめ

・モーメントアーム:回転軸と力の作用線を結んだ垂直距離。
・トルク:回転軸に生じる回転力。モーメントアーム×力(扱う重量)。

ここでは、モーメントアームとトルクに関して記載しましたが、正直な所これらの用語を把握せずとも、トレーニングに打ち込むことは十分に可能です。むしろ、知っている人の方が少ないでしょう。

しかし、これらの用語をしっかりと把握しておけば、トレーニングに関する理解をより一層深めることができます。

必須とは言いませんが「トレーニングの質をより高めたい」と思われるのであれば、これらの用語を覚えておくに越したことはないでしょう。