フリーウェイトvsスミスマシン ベンチプレスで高重量を持てるのは?

 

大胸筋・三角筋・上腕三頭筋など、上肢の筋群を鍛える代表的な種目に(ベンチプレス)があります。ベンチ台に寝転び、シャフトを持ち上げる種目です。

ベンチプレスには、シャフトの軌道を自由に描ける「フリーウェイト」と、シャフトの軌道が固定されている「スミスマシン」2つのバリエーションがありますが「フリーウェイトの方が高重量を持てる」という人もいれば「スミスマシンの方が高重量を持てる」という人もいます。

もっとも、同じベンチプレスとはいえど勝手が違うため、このような意見のズレは出てきて当然でしょう。今までずっとフリーウェイトで行ったきた人はフリーウェイトの方が、今までずっとスミスマシンで行ってきた人はスミスマシンの方が高重量を持てるはずです。

しかし、もし仮に全く同じ人が2人いて、その2人がそれぞれフリーウェイトとスミスマシンを極めたとした時、どちらの方がベンチプレスで高重量を持てるのでしょうか?

意外かもしれませんが、これはフリーウェイトになります。

なぜフリーウェイトの方が高重量を持てるのか?

モーメントアームの長さ

ここに、前腕が短いAさんと、前腕が長いBさんがいます(ちなみに、彼らは前腕の長さが違うだけで、そのほかは全く同じです)。彼らに同重量のシャフトを持たせ、仰向けに寝そべった状態でフロントレイズを行ってもらいます。

ではこの時、どちらの方がより大きな力発揮を必要とするでしょうか(どちらの方がキツイでしょうか)?イメージでわかるかもしれませんが、これはBさんになります。

なぜなら、Bさんの方がモーメントアームが長いため、つまり、支点となる肩関節と作用点となるシャフトまでの垂直距離が離れているため、より大きなトルクが発生するからです。

なお、モーメントアームについて詳しく知りたい方は(筋トレ知識 モーメントアームとトルクとは?)をご覧ください。

それでは、AさんとBさんの話を踏まえたうえで本題に入ります。

フリーウェイトはシャフトの軌道を自由に描けるため、動作中モーメントアームの長さを変化させることができます。より少ない力で重量を持てる位置に、シャフトを移動させることが可能です。

一方、スミスマシンはシャフトの軌道が固定されているため、動作中モーメントアームの長さを変化させることができません。より少ない力で重量を持てる位置に、シャフトを移動させることが不可能です。

下のイラストは、世界トップレベルのパワーリフター(competitive)と初心者(novice)におけるシャフト挙上時の軌道を表したものですが、世界トップレベルのパワーリフターはすぐにシャフトを頭側へと移動、つまり「モーメントアームの長さを変化させている=より少ない力で重量を持てる位置に、シャフトを移動させている」のがわかります。

出典:Madsen N, et al. Kinematic factors influencing performance and injury risk in the bench press exercise. Medicine and science in sports and exercise 16.4 (1984): 376-381.

このように「モーメントアームの長さ」という理由から、フリーウェイトの方が高重量を持てるわけです。

ただここで「挙上重量にモーメントアームの長さが関係するのであれば、最初からモーメントアームが短い位置に、つまり、支点となる肩関節と作用点となるシャフトまでの垂直距離が近い位置(鎖骨周辺)にシャフトが着地するようにすれば、スミスマシンの方が高重量を持てるんじゃないの?」という疑問が生まれるかもしれません(下のイラストを参照)。

理にはかなっているのですが、実はこうするといくつか問題が発生します。その1つが、シャフトの移動距離です。

シャフトの移動距離

鎖骨周辺にシャフトが着地するようにすれば、確かにモーメントアームは短くなります。

しかし、私たち人間の身体は決して平坦ではありません。いわゆる「起伏」があり、横から見た時の位置の高さは、胸のトップ周辺>鎖骨周辺です。

そのため、鎖骨周辺にシャフトを着地させると、シャフトの移動距離が長くなります。シャフトの移動距離が長くなることは、少なくとも高重量を持ち上げるうえではあまり良いことではありません。

なぜなら、その分力を発揮する時間が増え、多くのエネルギーを消費するためです。

 

まとめ

・支点となる肩関節と作用点となるシャフトまでの垂直距離(モーメントアーム)が短い方が高重量を持ち上げることができる(①)。
・シャフトの移動距離が短い方が高重量を持ち上げることができる(②)。
・フリーウェイトはシャフトの軌道を自由に描けるため、①と②を同時に達成することが可能。
・スミスマシンはシャフトの軌道が固定されているため、①と②を同時に達成することが不可能。
・よって「もし仮に全く同じ人が2人いて、その2人がそれぞれフリーウェイトとスミスマシンを極めたとした時、どちらの方がベンチプレスで高重量を持てるのでしょうか?」という質問の答えはフリーウェイトになる。

ちなみに、詳しくは(こちらの英語文献)を見ていただきたいのですが、

・18〜25歳の男女が対象。
・男性16人、女性16人の計32人。
・ベンチプレスの1RMを測定。
・バリエーションは2つ。
・1つ目はフリーウェイト。
・2つ目はスミスマシン。

という研究が行われております。その結果は以下の通りです。

男性
フリーウェイト:112.9 ± 18.8kg
スミスマシン:100.6 ± 17.6kg
女性
フリーウェイト:43.7 ± 9.2kg
スミスマシン:34.2 ± 8.3kg

このようなデータが得られた理由として、研究者たちは「フリーウェイト及びスミスマシンの経験歴」や「摩擦(スミスマシンではシャフトとレールに摩擦が生じる)」などを考察しているのですが、そのほかの理由として、一番に「シャフトの通り道」を挙げています。

The FW bench press was significantly greater (16%) than the SM bench press exercise. The proposed rationale for this difference between the modes may be explained by the path of the bar during the ascent.

引用:Comparison of muscle force production using the Smith machine and free weights for bench press and squat exercises.

 

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