スク膝③ ニーイントゥーアウト・せん断力と膝の傷害

 

前回の記事(スク膝② 支持基底面と重心線)に引き続き、覚えてもらいたい知識を書き綴っていきます。

1.支持基底面と重心線
2.ニーイントゥーアウトと膝の傷害
3.せん断力と膝の傷害
4.可動域と効果
5.脊柱の屈曲と椎間板内圧

今回の記事は「2.ニーイントゥーアウトと膝の傷害」「3.せん断力と膝の傷害」についてです。

ニーイントゥーアウトと膝の傷害

ニーイントゥーアウト(knee-in toe-out)とは、解剖学的に「膝関節外反・下腿外旋の肢位」を指します。つまるところ、下の写真ように「膝が内側に、つま先が外側に向いている」状態がニーイントゥーアウトです。

そして、このニーイントゥーアウト状態での負荷発生は「膝を怪我しやすい」との報告があります(詳しくはこちらの英語文献こちらの日本語文献を参照)。

全国のトレーナーが、スクワット中に「膝が内側に入らないように」と指示を出すのは、膝への負担を減らし、傷害のリスクを下げるためです。

 

せん断力と膝の傷害

せん断力とは「物体にずれを起こす力」を指します。「パンチで紙に穴を開ける」「ハサミで紙を切る」「手で紙を破く」などが、せん断力の代表的な例です。

少し話は変わりますが、太もも前にある大腿四頭筋を鍛える人気な種目にレッグエクステンションがあります。

膝関節を屈伸(屈曲・伸展)させる「単関節エクササイズ」です。そして、膝関節の伸展時に負荷がかかります。

しかし、私はこのエクササイズを推奨することはありません。

先述した通り、レッグエクステンションは膝関節を屈伸させる単関節エクササイズです。膝関節の伸展には大腿四頭筋が働くのですが「膝関節のみを動かす」がゆえ、大腿四頭筋しか働きません。

そのため、大腿骨に対してスネの骨である頚骨が前方へと移動するせん断力が強く働きます(赤矢印)。つまりは、頚骨を前方へとずらす力が働く = 膝に大きな負担がかかるわけです。

一方、レッグエクステンションとは異なり、スクワットは老若男女問わず推奨しています。

スクワットは膝関節だけでなく、股関節も屈伸させる「多関節エクササイズ」です。そして、股関節の伸展時に負荷がかかります。

股関節の伸展には、太もも後ろにあるハムストリングスが働くのですが、このハムストリングスは股関節の伸展のほか、膝関節の屈曲作用も有しています。

レッグエクステンションでは大腿四頭筋しか働かないため、頚骨が前方へと移動するせん断力が強く働きましたが、スクワットでは大腿四頭筋だけでなくハムストリングスも働くため、せん断力は小さくなります。

下のイラストをご覧いただきたいのですが、ハムストリングスが脛骨を後方に引くため、脛骨の前方へのずれが抑制される = 膝への負担が小さくなるという仕組みです(青矢印)。

Mark Rippetoe. Starting Strength. 2013

全国のトレーナーが、スクワット中に「お尻を後ろに突き出すように(股関節を大きく使うように)」と指示を出すのは、ハムストリングスをより働かせ→せん断力を小さくし→膝への負担を減らし→傷害のリスクを下げるためです。

なお、せん断力について詳しく知りたい方は(レッグエクステンションやスクワットは膝に悪い?膝への負担は?)をご覧ください。

 

まとめ

・「膝が内側に、つま先が外側に向いている」状態がニーイントゥーアウト。
・ニーイントゥーアウト状態での負荷発生は「膝を怪我しやすい」との報告がある。
・「物体にずれを起こす力」がせん断力。
・膝に生じるせん断力が強い = 膝に大きな負担がかかる。
・膝に生じるせん断力が小さい = 膝への負担が小さくなる。

 

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