筋力トレーニングの耳寄り情報を発信するブログです。国内外の論文をはじめ、これまでの指導・自身の経験をもとに記事を作成しています。

筋肉をつけながら体脂肪を落とす(減量)ことは可能か?

「美しい身体」の定義は人それぞれで違うでしょうが、一般的には適度の筋肉があり、余計な体脂肪がない状態をそのように呼ぶという印象があります。

そして、そのような身体を手に入れるため、人はトレーニングをしたり、食事を制限(または改善)したりするわけです。

しかし、ここで1つ疑問が生まれます。

「筋肉をつける」と「体脂肪を落とす」は、同時進行が可能なのでしょうか?つまり「筋肥大」と「体脂肪減少」は、両立できるのでしょうか?

最初に結論から申しますが「両立ができた」という報告と「両立はできなかった」という報告があります。そして個人的には、多くの方においては「両立は可能」と考えています。

論文を見てみる①

詳しくは(こちらの英語文献)を見ていただきたいのですが、この研究では

・28〜40歳の男性
・体脂肪率は平均で約27%
・体重は平均で約100kg

という、肥満者を対象に

・食事制限だけを行うグループ。
・食事制限+トレーニング+カゼインプロテインを摂取するグループ(カゼイングループ)。
・食事制限+トレーニング+ホエイプロテインを摂取するグループ(ホエイグループ)。

に分け、体組成がどのように変化するかを調べています。

その結果、12週間後、カゼイングループとホエイグループにおいて、有意な除脂肪体重(≒筋肉量)増加と体脂肪の減少が確認されました。

詳細は以下の通りです。

出典:Demling RH, et al. Effect of a hypocaloric diet, increased protein intake and resistance training on lean mass gains and fat mass loss in overweight police officers. Ann Nutr Metab. 2000;44(1):21-9.

論文を見てみる②

先ほどの研究では、肥満者が対象でした。

詳しくは(こちらの英語文献)を見ていただきたいのですが、この研究では

・18〜35歳の男女
・体脂肪率は平均で約17%(男)約27%(女)
・体重は平均で約79kg(男)約66kg(女)

という、バレーボールや柔道など様々なスポーツのアスリートを対象に、トレーニングと食事制限で、体組成がどのように変化するかを調べています。

その結果、約9週間後、有意な除脂肪体重(≒筋肉量)増加と体脂肪の減少が確認されました。

詳細は以下の通りです。

出典:Garthe I, et al. Effect of two different weight-loss rates on body composition and strength and power-related performance in elite athletes. Int J Sport Nutr Exerc Metab. 2011 Apr;21(2):97-104.

論文を見てみる③

先ほどの研究では、アスリートが対象でした。

詳しくは(こちらの英語文献)を見ていただきたいのですが、この研究では

・21歳の男
・体脂肪率は14%
・体重は86kg

という、アマチュアボディビルダーを対象に、トレーニングと食事制限で、体組成がどのように変化するかを調べています。

その結果、14週間後、有意な除脂肪体重(≒筋肉量)と体脂肪の減少が確認されました。

詳細は以下の通りです。

出典:Robinson SL, et al. A nutrition and conditioning intervention for natural bodybuilding contest preparation: case study. J Int Soc Sports Nutr. 2015 May 1;12:20.

考察

ここでは

・体脂肪率が約27%の肥満者
・体脂肪率が約17%(男)約27%(女)のアスリート
・体脂肪率が14%のアマチュアボディビルダー

という、3つの異なる体型のタイプを対象にした研究を紹介しましたが、研究結果をそのまま鵜呑みにするのであれば

・体脂肪率が通常以上、具体的には15%以上では筋肥大と体脂肪減少の両立は可能。
・体脂肪率が通常未満、具体的には15%未満では筋肥大と体脂肪減少の両立は不可能。

と、言うことができるもしれません。

しかし、事はそれほど単純ではありません。

論文を見てみる②で紹介した研究では「有意な除脂肪体重(≒筋肉量)の増加と体脂肪の減少が確認されました」つまり、筋肥大と体脂肪減少の両立が確認された、と記載しましたが、実は、両立が確認されなかったグループも存在します。

一体どういうことなのかを理解するために、論文を見てみる②で紹介した研究の詳細を見ていきましょう。

・18〜35歳の男女が対象。
・彼らを2つのグループに分ける。
・1つめのグループは食事制限がゆるい、つまり、ゆっくりとしたペースで減量するグループ。
・2つめのグループは食事制限がキツイ、つまり、速やかなペースで減量するグループ。
・体組成がどのように変化するかを調べる。

という研究を行った結果

・ゆっくりペースでは有意な除脂肪体重(≒筋肉量)の増加と体脂肪の減少が確認された。
・速やかなペースでは体脂肪は減少したが、除脂肪体重(≒筋肉量)は変化しなかった。

というデータが得られています。

出典:Garthe I, et al. Effect of two different weight-loss rates on body composition and strength and power-related performance in elite athletes. Int J Sport Nutr Exerc Metab. 2011 Apr;21(2):97-104.

つまるところ、何を言いたいのかというと、筋肥大と体脂肪減少が両立できるかどうかは、体脂肪率だけではなく、減量のペースでも変わってくるということです。

「体脂肪率が通常以上、具体的には15%以上では筋肥大と体脂肪減少の両立は可能」「体脂肪率が通常未満、具体的には15%未満では筋肥大と体脂肪減少の両立は不可能」などと、単純に言い切る事はできないのです。

では、結局のところ、一体どのような条件をクリアすれば、筋肥大と体脂肪減少の両立ができるのかというと、残念ながらわかりません。

しかし、これらの科学的知見や、私個人・知人のボディビルダー達の経験等をまとめると

・トレーニング経験のない肥満者においては、1週間あたり体重の1%以下の体脂肪を落とす減量ペースだと、筋肥大と体脂肪減少の両立は可能。
・トレーニング経験のない肥満者においては、1週間あたり体重の1%以上の体脂肪を落とす減量ペースでも、筋肥大と体脂肪減少の両立はできるかもしれない。
・絶食に近い過度な食事制限においては、いくらトレーニング経験のない肥満者であったとしても、筋肥大と体脂肪減少の両立はまず不可能。
・トレーニング中級者や体脂肪率が15%前後の方においては、1週間あたり体重の0.7%以下の体脂肪を落とす減量ペースだと、筋肥大と体脂肪減少の両立は可能。
・トレーニング中級者や体脂肪率が15%前後の方においては、1週間あたり体重の1%以上の体脂肪を落とす減量ペースだと、筋肥大と体脂肪減少の両立は難しくなる。
・トレーニング上級者でかつ体脂肪率が10%未満の方においては、1週間あたり体重の1%以上の体脂肪を落とす減量ペースだと、筋肥大と体脂肪減少の両立はまず不可能。
・トレーニング上級者でかつ体脂肪率が10%未満の方においても、1週間あたり体重の0.5%以下みたいなゆっくり体脂肪を落とす減量ペースだと、筋肥大と体脂肪減少の両立は難しいが、筋肉量をある程度維持する事は可能。

このような感じになるのではないかと思われます。

最後に

先ほどまとめを書きましたが、トレーニングや食事の内容によっても、筋肥大と体脂肪減少が両立できるかどうかは変わってくるはずです。

いくらトレーニング経験のない肥満者で、1週間あたり体重の1%以下の体脂肪を落とす減量ペースでも、タンパク質の摂取量が体重×0.5gなどでは、筋肥大はまず不可能でしょう。

詳しいことがまたわかり次第、追って紹介したいと思います。

お知らせ

筋トレ教則本をお読みの皆様、いつもご覧いただきありがとうございます。

当サイトは、今現在記事の更新を行っておりません。

ブログの更新は、下のサイトで行っております。