前回、インクラインでのベンチプレスは、他の傾斜(フラット・デクライン)に比べ大胸筋上部に大きな刺激を与えることができない、つまり「他の傾斜よりも、大胸筋上部を鍛えるのに効果的とは言えない」というデータをいくつか紹介しました(インクラインベンチプレスは大胸筋上部を鍛えるのに効果的か?)。
では「大胸筋上部を集中的に鍛えていきたい」という人は、一体どのような種目を行っていけば良いのでしょうか?
最初に結論から申しますが「ワイドのリバースグリップベンチプレス」をオススメしています。
ワイドのリバースグリップベンチプレスにおける大胸筋上部の筋活動について
詳しくは(こちらの英語文献)を見ていただきたいのですが、
・12人の男性が被験者。
・ベンチプレスを行い大胸筋上部の筋活動を測定。
・バリエーションは全部で5つ。
・ナロー・ミドル・ワイドのフォワードグリップベンチプレス(通常のベンチプレス)。
・ミドル・ワイドのリバースグリップベンチプレス(手の向きを変えるベンチプレス)。
・扱う重量はミドルのリバースグリップベンチプレスで12レップ行える重さ。
という実験を行いました。
ちなみに手幅ですが、
・ナロー:手のひら一つ分開ける。
・ミドル:肩峰間隔100%。
・ワイド:肩峰間隔200%。
となっています。
その結果、
・ワイドのリバースグリップベンチプレスで有意な増加を記録。
というデータが得られました。
下のグラフは、ワイドのフォワードグリップベンチプレスにおける大胸筋上部の筋活動を「100」とした時の「活動比率」を表したものです。
注意点
この実験では、大胸筋上部のほか大胸筋中部・上腕三頭筋・上腕二頭筋の筋活動も測定しているのですが、三角筋に関してはノータッチとなっています。また、ワイドのリバースグリップベンチプレスにおいて、どの筋肉が一番大きな筋活動を記録したかの記載はありません。
あるのは、ワイドのフォワードグリップベンチプレスにおける大胸筋上部〜上腕二頭筋の筋活動を「100」とした時「ほかのバリエーションではどうだったか」というものです。
そのため「ワイドのリバースグリップベンチプレスは、大胸筋上部に一番大きな刺激が入る」と断言することできません。もしかしたら、三角筋に一番大きな刺激が入るかもしれません。
さらに「測定はアイソメトリックにて行われた」という点にも注意が必要です。
しかし、大胸筋上部の筋活動は「ワイドのリバースグリップベンチプレスで有意な増加を記録」というデータがあることは事実ですので「ワイドのリバースグリップベンチプレスは、大胸筋上部に一番大きな刺激が入る」可能性は十分にあると考えています。
ワイドのリバースグリップベンチプレスのやり方
基本的には、フォワードグリップベンチプレスと流れは同じです。しかし、気をつけていただきたいポイントが4つありますので、それを記載していきます。
なお、通常のペンチプレス(フォワードグリップベンチプレス)のやり方を知りたい方は(オススメ筋トレ種目ベンチプレスの効果・やり方・呼吸を解説)をご覧ください。
ポイント①:フォーワードグリップベンチプレスを行う時より、つまり、いつもよりやや上に寝転ぶようにしてください。実際にやってもらえればわかるのですが、いつもと同じ位置に寝転んでしまうと、ラックアップがなかなか大変になるためです。
ポイント②:手幅は、肩峰間隔の200%に設定してください。170㎝前後の平均身長の人では、バーベルに刻まれているライン上に小指が来るように握ると、だいたい肩峰間隔の200%になります。
ポイント③:前腕を地面と垂直に保ちながら、みぞおち付近へとバーベルを下ろしていきます。バーベルを下ろす位置が鎖骨付近だと、肘関節に屈曲力が生じ上腕三頭筋に大きな刺激が加わり、バーベルを下ろす位置がへそ付近だと、肘関節に伸展力が生じ上腕二頭筋に大きな刺激が加わるためです。
ポイント④:かなりの低重量から始めてください。ワイドのリバースグリップベンチプレスは、フォワードグリップベンチプレスよりも持ち上げられる重量がはるかに劣るためです。
まとめ
「大胸筋上部の筋活動は、ワイドのリバースグリップベンチプレスで有意な増加を記録」というデータがあるため「大胸筋上部を集中的に鍛えていきたい」という人には、ワイドのリバースグリップベンチプレスをオススメしています。
さすがに1ヶ月では難しいかもしれませんが、3〜4ヶ月ほど継続すれば、しっかりとした効果を実感できるはずです。上に挙げた4つのポイントに気をつけ、ぜひ挑戦してみてください。