EMSと呼ばれる機器があります。「Electrical Muscle Stimulation」の頭文字をとったもので、お腹や太もも・二の腕などに巻きつけ、筋肉に電気刺激を送るアレです。
深夜番組や雑誌などで、皆様も一度は目にしたことがあるのではないでしょうか?
今回の記事は「EMSには効果があるのか?」や「ウエイトトレーニングとEMSでは、どちらを取り入れるべきか?」について書き綴っていきたいと思いますが、最初に結論から申しますと、
・「効果があった」という報告と「効果がなかった」という報告がある。
ウエイトトレーニングとEMSでは、どちらを取り入れるべきか?→
・基本的には、ウエイトトレーニングを取り入れるべき。
となっています。
EMSに関する論文を見てみる
詳しくは(こちらの英語文献)を見ていただきたいのですが、
・25〜50歳の成人が対象。
・彼らを2つのグループに分ける。
・1つ目はEMSを用い腹部を刺激するグループ(以下EMSG)。
・2つ目は腹部を刺激しないグループ(以下Con)。
・EMSの電気刺激はできるだけ高いレベルに設定。
・週5回8週間継続。
・Slendertoneを使用。
という実験が行われました。
被験者は、実験前と後で腹部の筋力および筋持久力(腹筋運動)の測定に参加しているのですが、
・EMSG:56.6→89.2N·mと58%増加。
・Con:有意な変化なし。
筋持久力
・EMSG:35→70回と100%増加。
・Con:32→41回と28%増加。
というデータが得られました。
なお、この実験では中間期である4週目の変化率も測定されているのですが、
・EMSG:56.6→75.8N·mと34%増加。
・Con:有意な変化なし。
筋持久力
・EMSG:35→52回と47%増加。
・Con:有意な変化なし。
となっています。
筋持久力において、Conでは最終的に28%の増加が確認されていますが、これはその動作を学習したことによるためと考察されており、EMSGは正味「72%」の増加をもたらすとのことです(100−28)。
ウエイトトレーニング vs EMS
EMSには、筋力および筋持久力を増加させる効果があることがわかりましたが、ウエイトトレーニングと比べると、そのほどは一体どうなのでしょうか?
詳しくは(こちらの英語文献)を見ていただきたいのですが、
・30〜50歳の男性が対象。
・彼らを2つのグループに分ける。
・1つ目はウエイトトレーニングを行うグループ(以下HIT)。
・2つ目はEMSを用い筋肉を刺激するグループ(以下EMSG)。
各グループの詳細
・種目はレッグプレス・レッグエクステンション・レッグカールなど約10種類。
・内容は3〜5レップ、8〜10レップ、スーパーセットを取り入れるなど日によって変える。
・週2回16週間継続。
・太もも・腕など様々な部分を刺激する。
・刺激を与えつつスクワットやショルダープレスなどを行う。
・Mihabodytecを使用。
・2週に3回16週間継続。
という実験が行われた結果、
・HIT:12.7 ± 14.7%増加。
・EMSG:7.3 ± 10.3%増加。
バックエクステンション筋力
・HIT:10.2 ± 8.8%増加。
・EMSG:11.6 ± 10.0%増加。
除脂肪体重
・HIT:1.25 ± 1.44%増加。
・EMSG:0.93 ± 1.15%増加。
というデータが得られました。
両グループで、筋力および除脂肪体重の増加が確認されていますが、グループ間で有意差はなく「EMSGはHITに引けを取らない、または少なくとも同等の増加を観察した」と記載されています。
私なりの考察
筋力および除脂肪体重において「EMSはウエイトトレーニングに引けを取らない、または少なくとも同等の増加を観察した」となってはいますが、この実験で使用されたEMSはMiha Bodytecで、先に紹介したSIXPADやSlendertoneとは一線を画します。
詳しくは下の動画を見ていただきたいのですが「電気刺激を与えつつも身体を動かす」というものです。
SIXPADやSlendertoneのような「テレビを観ながら」や「本を読みながら」など「ごくごく一般的なEMS」を用いた実験が行われていれば良かったのですが、残念ながら探し当てることはできませんでした。
そのため、ウエイトトレーニングとEMS(ごくごく一般的なEMS)における効果のほどがどれほど違うかは、正直なところわかりません。
しかし「基本的には、ウエイトトレーニングを取り入れるべき」と考えています。
もし仮に、筋力や筋持久力、そのほか除脂肪体重における増加率が全く同じであったとしても、ウエイトトレーニングには、
・関節可動域を拡大させる(こちらの英語文献を参照)。
・腱を強化させ、骨密度を増加させ、高血圧をも改善させる(こちらの記事を参照)。
など、様々な効果が確認されているためです。
まとめ
「EMSには効果があった」というデータを2つ紹介しましたが、一方で「EMSには効果がなかった」というデータも存在します。
詳しくは(こちらの英語文献)を見ていただきたいのですが、
・大学生の男女が対象。
・彼らを2つのグループに分ける。
・EMSを用い筋肉を刺激するグループ。
・何もしないグループ。
・刺激箇所は上腕二頭筋や上腕三頭筋・大腿四頭筋など。
・週3回8週間継続。
・Bodyshaperを使用。
という実験が行われた結果「EMSを用い筋肉を刺激しても、筋力および体組成において、特にこれといった有意な変化は確認されなかった」というデータが得られました。
このように、Slendertoneでは有意な変化が確認され(筋力および筋持久力)、Bodyshaperでは有意な変化が確認されませんでしたが(筋力および体組成)、だからと言って「Bodyshaperを使用する意味はない」と断言できるわけではありません。
そもそも、Slendertoneを使用した実験では頻度が「週5回」に設定されていますが、Bodyshaperを使用した実験では頻度が「週3回」に設定されています。
週3から週5に頻度を増やせば、Bodyshaperでも変化が確認されるかもしれませんし、週5から週3に頻度を減らせば、Slendertoneでも変化が確認されないかもしれません。
現段階でははっきりと言えませんが、EMSによる効果を得たいのであれば、
・モデル
・強度
・セッション時間
・頻度
・継続期間
などを考慮する必要があるでしょう。