トレーニングを勉強されている人や、パーソナルトレーニングを受講された経験のある人は「鍛えている筋肉を意識する事は重要」といったセリフを、目にしたり耳にした事があるのではないでしょうか?
事実私自身も、この種目は「〇〇筋を使う(ググッと縮める)意識をしましょう」「□□筋の伸び(ストレッチ)を意識しましょう」と、常々指導しています。
今回の記事は「鍛えている筋肉を意識する事の重要性」について書き綴っていきますが、なぜそのような指導をしているのかというと、
・適切なフォームを効率的に習得・維持する事が可能。
・結果、効果が高まり、傷害発生のリスクを低減させる事ができると考えている。
からです。
「筋肉の活動が増加した」というデータがある
詳しくは(こちらの英語文献)を見ていただきたいのですが、
・トレーニング経験のある男性18人が対象。
・ベンチプレスを行ってもらう。
・20%・40%・50%・60%・80%1RMで実施。
・3つのパターンを用意。
・1つ目はいつも通りベンチプレスを行ってもらうパターン(以下普通)。
・2つ目は「大胸筋を使う」意識をするパターン(以下胸意識)。
・3つ目は「上腕三頭筋を使う」意識をするパターン(以下腕意識)。
・筋肉の活動を調べる。
という実験が行われました。その結果は以下の通りです。
・普通21%→胸意識28% (20%1RM)
・普通38%→胸意識44% (40%1RM)
・普通52%→胸意識57% (50%1RM)
・普通56%→胸意識65% (60%1RM)
・普通31%→腕意識42% (20%1RM)
・普通47%→腕意識53% (40%1RM)
・普通55%→腕意識59% (50%1RM)
・普通60%→腕意識64% (60%1RM)
出典:Calatayud J, et al. Importance of mind-muscle connection during progressive resistance training. Eur J Appl Physiol. 2016 Mar;116(3):527-33.
このように「20〜60%1RMの間で、胸意識では大胸筋が、腕意識では上腕三頭筋の活動が増加した」というデータが得られました。「ある特定の筋肉を使う」つまり「鍛えている筋肉を意識する事で、より大きな刺激が加わる」という事です。
もっとも、80%1RMにおいては、胸意識でも腕意識でも特にこれといった筋肉の活動の増加は確認されていません。そのため「扱う重量が重くなれば(具体的には80%1RMを越えると)、筋肉の活動の程度は負荷に左右される」という事が言えるでしょう。
なお、詳しくは(こちらの英語文献)を見ていただきたいのですが「鍛えている筋肉を意識することで、より筋肥大した(筋肉量が増加した)」というデータも存在します。
適切なフォームを効率的に習得・維持する事が可能
これは「指導者」としての経験論なのですが、鍛えている筋肉を意識するよう指導する事で「適切なフォームを効率的に習得できた」や「適切なフォームを維持できた」という場面が何度もあります。
(ベンチプレス)を例に挙げますが、ベンチプレスでは肩甲骨を寄せてもらいます。理由を詳しく知りたい人は(ベンチプレスを行うと肩が痛くなる人へ 痛みの原因はフォームにあり)をご覧ください。
そのため「鉛筆を挟むように肩甲骨を寄せましょう」と言葉をかけるのですが、これだけだとちょっと弱いかなと思う時があります。
なぜなら、本人は肩甲骨を寄せているつもりでも、実際には肩甲骨があまり寄っていなかったり、1〜3レップ目は肩甲骨が寄っていても、8〜10レップ目とレップ数をこなすにしたがい、肩甲骨が離れてしまう場合があるからです。
そんな時には「大胸筋の伸びを意識しましょう」と合わせて言葉をかけると、少なくとも経験上たちまち肩甲骨が寄ります。つまり、適切なフォームを効率的に習得・維持する事が可能になります。
「さっきのセットは、大胸筋の伸びをほとんど感じなかった。という事は、肩甲骨があまり寄っていなかったのかもしれない」や「今回のセットは、大胸筋の伸びをしっかりと感じる。という事は、さっきのセットよりも肩甲骨が寄っているんだろう」といった具合に「大胸筋の伸び度合い」が「肩甲骨が寄っているかどうか」の指標・目安となるためです。
もっとも、ここではベンチプレスを例に挙げましたが(スクワット)や(ルーマニアンデッドリフト)など、様々な種目にも応用が効きます。
まとめ
・適切なフォームを効率的に習得・維持する事が可能。
との理由から「鍛えている筋肉を意識する事は重要」となります。
結果、効果が高まり、傷害発生のリスクを低減させる事ができると考えています。