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リバースランジを指導してフォワードランジを指導しない理由

基本的に、競技力向上を目的としている方においては、下肢のトレーニングとして(スクワット)と(ルーマニアンデッドリフト)から指導を開始します。

そして、スクワットとルーマニアンデッドリフトのフォームを習得し、ある程度の重量を扱えるようになったら(リバースランジ)など違うエクササイズも取り入れていきます。

個人的に、リバースランジは超がつくほどオススメのエクササイズで、スクワットやルーマニアンデッドリフトにはないメリットがあります。以下が代表的なメリットです。

・左右で動作が違うため、筋力や安定性能力の左右差を把握できる。
・上体をほぼ直立したまま行えるため、脊柱起立筋への刺激を少なくし、下肢の筋群をしっかりと追い込むことができる。
・前脚の片側性筋力を向上させることができる。
etc.

しかし、これらのメリットは何もリバースランジだけのものではなく、フォワードランジにも当てはまります。が、私はフォワードランジを指導することはまずありません

今回の記事は、リバースランジを指導してフォワードランジを指導しない理由について書き綴っていきますが、最初に結論から申しますと、

せん断力
大臀筋の筋活動
スペース

の3つが主な理由となっています。

リバースランジとフォワードランジとは

リバースランジ

直立した状態から後ろに足を引き→しゃがみ→元の直立状態に戻るエクササイズです。バックランジ、とも呼ばれたりします。

フォワードランジ

直立した状態から前に足を出し→しゃがみ→元の直立状態に戻るエクササイズです。フロントランジ、とも呼ばれたりします。

違い

リバースランジとフォワードランジの違いはシンプルで、足を「後ろに引く」か「前に出す」かだけです。スタートポジションや、動作の折り返し地点のフォームは特に変わりません。

それでは、リバースランジとフォワードランジについて確認ができたところで本題に入っていきましょう。

理由その1、せん断力

せん断力とは物体に「ずれ」を起こす力のことで「パンチで紙に穴を開ける」「ハサミで紙を切る」「手で紙を破く」などが該当します(詳しくはこちらの記事をご覧ください)。

下の写真は物体に生じる力を表したものですが、赤矢印がせん断力、緑矢印が圧縮力、青矢印が引っ張り力です。

そしてこのせん断力は、膝にとって好ましいものではありません。膝前十字靭帯への負担が大きくなることで痛みが発生したり、怪我をしていた人は再発する確率が高まるためです。

詳しくは(こちらの英語文献)を見ていただきたいのですが、ここではいくつかのランジパターンを用意し、膝におけるせん断力を調べています。

その結果、せん断力は「リバースランジ<フォワードランジ」とのデータが得られました。リバースランジを指導してフォワードランジを指導しない理由は、リバースランジの方が傷害の危険性が低いためです。

理由その2、大臀筋の筋活動

スクワットやルーマニアンデッドリフトの筋活動を調べた研究はいくつかあるのですが、スクワットでは大腿四頭筋、ルーマニアンデッドリフトではハムストリングスが最も大きく働きます(詳しくはこちらの英語文献こちらの英語文献を参照)。

そのため、ランジでは可能な限り、大臀筋に強い刺激が入るバリエーションで行いたいという思いがあります。つまり、筋群をある程度満遍なく強化したいわけです。

詳しくは(こちらの英語文献)を見ていただきたいのですが、ここではいくつかのランジパターンを用意し、大臀筋における筋活動を調べています。

その結果、大臀筋の筋活動は「リバースランジ>フォワードランジ」とのデータが得られました。リバースランジを指導してフォワードランジを指導しない理由は、リバースランジの方が大臀筋に強い刺激が入る = 効くためです。

理由その3、スペース

ランジを行う場合はラックが必要になりますが、このラックは一般的に「箱内でエクササイズを行うタイプ」と「箱外でエクササイズを行うタイプ」の2つに分けることができます。左が箱内、右が箱外です。

リバースランジもフォワードランジもスタートポジションから移動しますが、その移動距離は「リバースランジ<フォワードランジ」となっているのが見て取れます。

私の身長は169㎝なのですが、差はだいたい25㎝ほどでしょうか。高身長の方であれば、さらに大きな差になっていたはずです。

リバースランジを指導してフォワードランジを指導しない理由は、この移動距離にあります。箱外のラックであれば問題ないのですが、箱内のラックしかなかった場合、高身長の方においては、フォワードランジを行うことが物理的に不可能になる場面が出てきます。

一方、リバースランジの場合は先述した通り移動距離が短いため、結構な高身長であれど、箱内のラックでも行うことは十分に可能です。つまり、リバースランジはどのようなラックにも対応ができる、ということです。

まとめ

・せん断力が小さく、膝の傷害の危険性が低い。
・大臀筋に強い刺激が入る = 効く。
・どのようなラックにも対応できる。

以上、主に3つの理由から、私はフォワードランジではなくリバースランジを指導しています。

※もっとも「足を移動させる瞬間の支持基底面の大きさ(安定性や扱える重量)」など、そのほかの理由もありますが長くなるため割愛します。

ただ、1つ注意していただきたいのですが、何も「フォワードランジを絶対に取り入れてはいけない」と言っているわけではありません。

リバースランジとフォワードランジを比較した研究はほぼないため断言はできませんが、もしかしたら「長期的なトレーニングにおいては、フォワードランジの方が、ジャンプ力やスプリント力などの身体能力を有意に向上させた」との研究結果がこれから先出てくるかもしれません。

しかし、先に記載した3つの事実から、個人的にはリバースランジを優先的に取り入れた方がよろしいのではないかと考えています。

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