前回(【アスリート】競技力向上 理論編③ トレーニングには「適切なやり方」がある)のまとめ
・1つ目は、トレーニングは「がむしゃらに行えば良い」というわけではないということ。
・つまり、トレーニングにはその人の目的や状況に合った「適切なやり方」があるということ。
・そのため、できることであれば専門家(ストレングス&コンディショニングコーチや、トレーニング指導者、という肩書きで活動されている方)に指導を依頼されることをオススメする。
・2つ目は、トレーニングを行い身体能力が向上したとしても、それがすぐさま競技力に結びつくとは限らないということ。
・トレーニングを行い→身体能力が向上し→競技力が向上するまでには、それなりの期間(早い人であれば2〜3ヶ月、遅い人でも1年、平均すると大体半年ほど)が必要になる。
トレーニングにおけるデメリット
競技力を決定する要素には身体能力があり、その身体能力はトレーニングを行うことで効果的に向上します。言い換えるのであれば、トレーニングには「身体能力を効果的に向上させる」というメリットがあるということです。
しかしながら、トレーニングにはこのようなメリットだけでなく、デメリットも存在するとされています。よく聞く代表的なものは、
・トレーニングは、筋肉や腱などの身体組織を変化させ、関節可動域を狭める。
以上の2点です。
これらは本当なのでしょうか?
かなり危険な運動である
詳しくは(こちらの英語文献)を見ていただきたいのですが、これには様々な運動における「100時間あたりの傷害率」が表としてまとめられています。
それを見てみますと、例えばサッカーは「6.2」ラグビーは「1.31」バスケットは「0.53」といった具合です。
では、トレーニングは一体どうなのかといいますと「0.0035」となっています。さらに、パワーリフティングやウエイトリフティング(いかに重たいバーベルを持ち上げることができるか)などの競技も、それぞれ「0.0027」「0.0017」とかなり低めです。
また、詳しくは(こちらの英語文献)も見ていただきたいのですが「トレーニングは、一般的なチームスポーツよりも傷害率が低い」との結論がなされています。
そのため「トレーニングは、重りを扱うため非常に怪我をしやすい。かなり危険な運動である」と主張するのは、いささか無理があるように思えます。
もっとも「トレーニングで怪我をすることは100%ない!!」というわけではありません。ゆえに、トレーニングを行う場合は、7つのルールを遵守することが推奨されています。
2.適切なテクニック(フォーム)で行うこと。
3.専門家(有資格者)に監督してもらうこと。
4.補助者やセーフティーバーを設置すること。
5.追い込みは必要最低限に留めること。
6.トレーニング器具が正常に機能するか確認すること。
7.十分なスペースを確保すること。
しかしながら、上記のルールはどのスポーツにも共通するような「ごくごく一般的なルール」ですし(特に「十分なウォームアップを行うこと」や「専門家(有資格者)に監督してもらうこと」)、傷害率はかなり低いというデータもあるため「トレーニングは安全性の高い運動」と捉えても問題ないと考えています。
関節可動域を狭める
詳しくは(こちらの英語文献)を見ていただきたいのですが、ここでは「しっかりと可動域を取るトレーニングを行うグループ」と「ストレッチを行うグループ」が、関節可動域にどのような影響を及ぼすかを調べています。
その結果「どちらのグループも関節可動域が有意に改善したが、グループ間で差は確認されなかった」というデータが得られました。つまり「トレーニングは、ストレッチと同じくらい関節可動域が広がった」ということです。
また、詳しくは(こちらの英語文献)や(こちらの英語文献)も見ていただきたいのですが、トレーニングが関節可動域にどのような影響を及ぼすかを調べている研究は他にもあるものの「関節可動域を狭める」という報告はありません。
もっとも、あまりにも筋肉を肥大させれば、もしかしたら関節可動域が狭まることもあるかもしれませんが、筋肉を肥大させるには、それ相応の労力・時間を必要とします。さらに、栄養にも気をつけなくてはなりません。
そのため、ちょっとやそっとトレーニングを行ったくらいでは「あまりにも筋肉を肥大させる」ことは現実まず不可能ですので「トレーニングは、筋肉や腱などの身体組織を変化させ、関節可動域を狭める」という心配は不要と考えています。
トレーニングにおけるそのほかのデメリット
←むしろ、安全性の高い運動。
・トレーニングは、筋肉や腱などの身体組織を変化させ、関節可動域を狭める。
←関節可動域を狭めるという報告は見当たらない。むしろ「関節可動域が広がった」という報告がある。
ということがわかりました。
では、これら2つ以外で、トレーニングのデメリットは何かあるのかといいますと「特別思い浮かばない」が率直な意見です。
巷では「お金がかかる」や「時間がかかる」が、トレーニングにおけるデメリットとして挙げられることがありますが、これに関しては「トレーニングにおけるデメリット」と個人的には認識していません。
例えば、バンド(音楽)を始めることになったとします。パートによっては、楽器を購入する必要があるでしょうし、楽曲を練習しなくてはなりません。また、絵画を始めることになったとします。
こちらも、筆や絵の具・画用紙などを購入する必要がありますし、景色を描こうものなら、そのスポットに赴かなくてはなりません。
つまるところ、何を言いたいのかというと「お金がかかる」や「時間がかかる」は「何か新しいことを始める上で、もしくは、それを行う上で必要になる譲歩」と捉えているということです。
そのため、トレーニングのデメリットについて聞かれた時は「特別思い浮かばない」とお答えしています。
次回に続く。
まとめ
・トレーニングにおけるデメリットは、特別思い浮かばない。
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